物流における「ロスプリベンション」

ロスプリベンションとは

 ロスプリベンションとは、欧米の小売業、流通業、海上貨物保険業界において、一般的な用語です。

 ロス=損害、プリベンション=未然に防ぐ、つまりロスにつながることを事前に見つけて、それに対して手を打ち、被害を最小限に抑える手法のことを指します。

 小売業の損失で最も大きなものは商品の流出ですが、店頭での消費者による万引き、盗難よりも従業員による持ち出しの方が大きいと言われています。ある商品を売った場合の利益が3.5%、商品の原価率が70%だとすると、商品1個盗難にあうと20個を販売しないと元が取れない状況になるわけで、その対策に躍起になることは理解できます

物流センターでの盗難対策

 物流センターでの盗難も大きな問題となっています。

 盗難防止は物流業界の大きな課題の一つで、低賃金や厳しい労働条件がその原因と考えられています。米国のアマゾンドットコムでは、物流センター内において盗難が発生した際に、倉庫内のスクリーンにアナウンスするといった措置を取っています。スクリーンがない倉庫施設においては、盗難の発生情報が掲示板に掲示されます。

 日本の小売量販系の物流センターであれば、従業員はカバンなどの個人の持ち物は持ち込むことができず、また退勤時には全員の持ち物検査を行うところが多いです。従業員や派遣社員を盗難で摘発してしまうと、不正を行った本人は不幸なことになってしまうわけで、従業員の損失を未然に防ぐためでもあります。これがロスプリベンションであり、アマゾンドットコムの施策は抑止力にはなりますがロスプリベンションからは外れると考えられます

大手物流業界には電子化されていない膨大なデータがある

 商品が商品ではなくなる瞬間は、貨物事故による破汚損です。これは物流センターにおける保管・荷役時や、トラック輸送時に発生します。

 事故を発生させた現場は貨物事故報告書を安全品質部に提出しなければならず、そこには被害状況と発生要因と対策を記入することになっています。そのデータをビッグデータとして処理することにより、事故と発生要因の関係性が明らかになり、ロスプリベンションにつながると考えています。センサー技術などを用いて事故状況のデータが自動的に収集され、それがビッグデータとなりBI(Business Intelligence)にて分析されると、一歩進んだロスプリベンションになることでしょう。

 ロジ・ソリューションではロスプリベンションのコンサルティングも行っております。

 一般的な対策としては「小物をあえて大きな袋に入れてしまい、持ち出した場合に目立つようにする」「作業員用のロッカーはシースルーにする」「ダミーでも良いのでRFID用の盗難防止ゲートを設置する」などの施策がありますが、まずは庫内の総点検から始まると思います。防犯カメラの死角がないかなど、プロの目から見てチェックを行い対策を講じるといったことも考えられます。

(文責:釜屋 大和)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第343号 2016年11月16日)