続・2030年の物流を考える

夏が終わりに差し掛かってきました。令和最初の夏でしたが、読者のみな様はどんな夏を過ごされたでしょうか。

以前執筆した「2030年の物流を考える」が2018年ばんばん通信ランキングで3位を獲得しました。初めてお会いするお客様から、記事に対するコメントを頂くこともあり、そういった反響は何物にも代えがたいほど嬉しいものです。私自身も上位になった理由を十分に分析できていませんが、「物流の2030年問題」がお客様にとって最も関心のあるテーマの1つだったのだと思います。各メディアで声高に叫ばれている人手不足問題、刻々と進むイノベーション(省人化設備、自動運転)等々、物流の未来は混沌としているといっても過言ではないでしょう。

前回の記事を執筆以降もお客様と2030年の物流を考える機会が多くありました。直近ではある物流事業者様より自動運転をめぐる動向および、それを踏まえた事業戦略についてご相談をいただきました。読者の皆さんもご存知の通り、自動運転技術は日進月歩の発展を遂げており、内閣官房IT総合戦略室の『官⺠ITS構想・ロードマップ2019(案)』によると、2025年を目途に高速道路での完全自動運転(レベル4)の実現が見込まれています。

まだまだ先の話かもしれませんが、自動運転による輸送サービスの登場により、輸送ビジネスそのものが大きく形を変えるのではないかと考えています。現在は未曾有のドライバー不足によって、安定的な輸送実現のニーズが高まっており、中期経営計画等で自社車両勢力の拡大をPRする物流事業者も多く存在します。ドライバーおよび車両を確保する力が物流事業者の競争力を示す重要な要素の1つとなっています。しかしながら、自動運転による輸送サービスの実現は、既存の物流業界の構造を大きく揺るがす可能性を秘めています。トヨタ自動車が発表した次世代モビリティ「e-Palette」はそうした業界の激変を十分に予感させます。自社でドライバーや車両を多く抱えることが、長期的には時代の変化に取り残されるリスクになりかねないのでは?とも考えさせられました。物流事業者の10年後の競合は他の物流事業者ではなく、他業界からの参入者なのかもしれません。

そんな状況だからこそ現状をしっかりと直視し、未来を描いていく必要があると考えます。事業戦略についてご相談をいただいた先述の物流事業者様とも、SWOT分析とSWOTクロス分析を通じて、現状を整理し未来への布石を検討しました。上記ビジネスフレームワークは非常に有名であり、既に実施したことがある読者の方もいらっしゃるかもしれません。ただ、こういった分析は実施するだけでなく、時代の変化に合わせて継続的に見直していくことが重要です。また、自社内で完結するよりも、外部の専門家等を交えて実施するほうが良い結果に繋がるケースもあります。外部の意見を取り入れることで、より客観的な現状把握が可能となる上に、自社内では出てこないような新しいアイデアが生まれる可能性があります。自社の戦略検討にあたって、一度外部の専門家の声を聞いてみてはいかがでしょうか。

(文責:野尻 達郎)

【参考資料】
『官⺠ITS構想・ロードマップ2019(案)』(内閣官房IT総合戦略室)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai76/siryou3-1.pdf

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第413号 2019年9月4日)