物流企業におけるIFRS(国際会計基準)の影響を考える:ITの活用は不可避に

IFRS義務付けが始まる

2009年6月16日に金融庁が公表した「わが国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)」によると、2015年あるいは2016年から、わが国の上場企業は、その財務報告の基準としてIFRSを適用することが義務付けられることになります。

それは企業が上場を維持するためには、IFRSで自社の連結財務諸表を作成して開示することが金融商品取引法上で要求されることを意味しています。つまり経営としては、IFRSで自社の財務報告を適正にかつ適時に実施する責務を負うことになります

そもそもIFRSとは「International Financial Reporting Standards(国際財務報告基準)」の略で日本では国際会計基準と呼ばれることが多いようです。世界では100カ国以上が適用もしくは許容している会計基準で、投資家の意思決定に有用な情報を提供するという財務諸表の目的に適合するように開発されたものです。そして2005年、EU域内の上場企業に対して強制適用されたことで世界的な広がりが始まりました。

そしてIFRSの特徴は原則主義、貸借対照表重視、公正価値測定の3つで、現在の日本の会計基準の特徴である規則主義、損益計算書重視とは異なります

荷主企業からの要請は

このような中で、物流企業における荷主の会計基準の変更による影響で大きいなものは荷主営業プロセスにおける「収益認識基準の見直し」による「出荷基準から着荷・検収基準への変更」です。

これにより荷主からは

(1)どうやってPOD(Proof Of Delivery:配達証明)を入手するのか?
(2)そして、それをどのように荷主社内のシステムに取り込むのか?
(3)特に、どうやって、会計処理に繋げるのか?

と言った3つの課題に対する協力要請があるようです。

実物流企業としてこの課題に対しての対応策は

(1)ITを駆使して「タイムリーにPODを報告」することでの対応
(2)J-SOX対応のプロセスに準拠することでの対応

の2つのパターンがあるかと思います。いずれにしても実務の中でのシステム化やIT化が前提になり装用も増加することが予想されます。

また検収基準に変更されることによるメリットとしては

(1)売上計上額と請求額が一致することになり、請求業務や入金消し込み業務が効率化される
(2)同じく月末に集中しがちな生産購買業務や出荷業務や売上計上業務が月の中である程度平準化される

という2点が予想されます。以上のような点を考慮した中で、荷主企業と受託企業で本当に必要な管理・統制方法について前向きな調整を行うことで費用の発生をどう抑えるかが大切になってくると思います。

(文責:濱野)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第43号 2009年8月5日)


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