物流を超える –農業事業から物流のヒントへ–

ここ数年、植物工場での野菜栽培技術が注目されております。植物工場とは、LED照明や空調、養液供給等、密室栽培方式により人工的に制御し、季節を問わず連続的に生産できるシステムで、葉物野菜を生産するという野菜の生産工場です。昨今の国内自給率の低下、農業生産者の減少により、国内生産野菜の切り札として国からも推進するという指針も出しています。

特徴としては、下記となります。
①1年中安定的に生産できる(台風・猛暑等天候に左右されない)
②工業団地・商店街の空き店舗等農地以外でも設置できる
③多段化で土地を効率的に利用できる
④自動化や多毛作で高い生産性を実現できる
⑤栄養素の含有量を高めることが可能
⑥無農薬で安全・安心、無洗浄で食べられる
⑦専用品種の開発や対象作物の拡大

2013年から、親会社であるセンコー株式会社が、物流以外の分野にも力を入れるべく、この農業事業に参入に向け動き出しました。我々ロジ・ソリューションもこの事業化計画の支援として、プロジェクトに参画し、生産体制や販路開拓等、事業化展開スケジュールの作成を進めております。上述した特徴を生かし、天候に左右されず安定した野菜が作成できることが最大の強みで、将来的にはセンコーや物流倉庫にシステムを導入、あるいは野菜が育ちにくい寒冷地の海外でも展開して収益を得るといった戦略もあります。

このビジネスを『仕入調達、生産、物流、販売』というサプライチェーンの軸で捉えると我々物流コンサルティング会社は当然、『物流』というスキームの構築に強みがあります。工場を需要地の近くに置くべきか、地方、都市圏、土地の代金や交通の便等、様々な要素を試算し検討しながら設計することが可能です。しかし、原料調達、生産、販売のスキーム構築においては検討していくことがあまりなかったため、頭をひねりながら試行錯誤を繰り返しています。この産業特有の仕入れルートや販売ルートの開拓にも苦戦しますが、最も重要なものは生産『ものづくり』です。良質の商品を完成させるために様々な生産・設備条件によって生産を実施し、商品評価を行うことを繰り返すことが必要です。あわせて生産性も追求していくことは非常に重要で、課題はまだまだ山積みです。生産担当者を通じて実験レポートをウォッチし、試行錯誤を繰り返しながら進めていますが、その難しさを身にしみて体感しております。

今までは、荷主・メーカー側に対し物流効率化の観点から、生産スケジュール調整や営業と販売先への物流条件の緩和(例:午前中納品指定の撤廃)等を物流コンサルタントという立場から提案してきました。今、この『ものづくり』のビジネス立ち上げを通じ、生産工程を変えることの難しさや、販売先との調整の苦労を身にしみて経験しています。各工程に入り込んでサプライチェーンの全体最適化を構築し、作る側、売る側の視点に立って物流最適化を提案することが今後の物流コンサルティングにも生きると確信しております。

今後、人口減少により物流マーケットは縮小していきます。労働力不足や気候変動、情報技術革新の先を見据えながら、全く別の新たな切り口からビジネスチャンスや効率化提案を考え出す柔軟性は、必ず必要になってくると思います。フィルムの減衰により経営破たんしたコダック社、ヘルスケア・化粧品分野への新規参入・シフトチェンジした富士フイルム社の事例もそうですが、未来の明暗を分ける『変化に対応する力』を追及することが必要です。過去の考えにとらわれない発想力や新しいことチャレンジしていくマインドを社員1人1人が持つことが、いずれ現在のコア事業にも刺激になり、相乗効果として良い答えを導くと信じています。

(文責:狭間 敦史)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第 288号 2015年7月8日)