地方の物流

先日、「新たな物流が地域の課題を解決する」というテーマのセミナーに参加しました。特に印象に残った地方における物流の事例を2つご紹介したいと思います。

■地方行政とのコラボレーション
青森県では、県とヤマト運輸が協定を結び、流通拡大を図る取組みがあります。生産者支援を目的とする「A!プレミアム」という取組みは、航空便を利用することで、青果や水産品などの県産品をより短いリードタイムで鮮度を保持したまま輸送できるサービスです。
従来は、翌日の午前中配達が可能なエリアの人口カバー率はたった7.5%でしたが、「A!プレミアム」を利用することにより、関東圏全域、四国や九州の一部までが翌日午前中配達が可能となりました。人口の多い地域が増えたことで、人口カバー率は一気に80%以上になりました。
また国内のみならず、沖縄国際ハブ空港を利用し、香港・台湾などの東南アジア圏にも翌日配達が可能となりました。実現できた理由は、沖縄国際ハブ空港では24時間通関が出来るためです。青森から集荷された県産品は当日夜に沖縄へ入り、アジアへ向けて出発、翌朝到着します。
近年の日本食ブーム、健康ブームに乗っかって、日本ブランドの食材には期待が持てる中、新しい物流網により販路が拡大したことは大きいと思います。取扱量が増えれば、生産者の生活は豊かになり、モチベーション向上にもつながって、一次産業の活性化につながるとも言えます。

■路線バスとのコラボレーション
岩手県では、宅配便の貨物を路線バスで輸送する取組みがあります。雑誌などでも取り上げられていますのでご存知の方も多いかと思いますが、岩手県盛岡市から宮古市の間を走っている急行バスや、宮古市から先の地域への輸送で一般の路線バスが利用されています。
フォークリフトでパレットのまま積み込みができるよう開発されたバスを使用したり、通常のバスの一部を貨物スペースとして使用したりしています。幹線輸送の部分をバスが担っており、ラストワンマイルはセールスドライバーが行います。
乗客数の減少で路線網の維持が困難となってきたバス業界と、ドライバー不足で頭を抱えていた物流事業者(バス業界も深刻なドライバー不足ではありますが)がうまくマッチしたコラボレーションではないでしょうか。行き先が同じであれば一緒に運んでしまおうというシンプルな発想ですが、今までの貨物同士の共同配送ではなく、人間と貨物の共同配送です。乗客と貨物を同じ乗り物で同時に運ぶことを貨客混載と呼ぶそうです。
バスの空きスペースが有効活用できて収益を得られれば、路線を維持することができ、地域住民にとっては生活の足を確保することができます。
これは高齢化社会の日本にとっては非常に大きいことだと考えます。最近よく耳にする高齢者運転の交通事故の対策として、運転免許の自主返納の推奨と聞きますが、そのためには公共の乗り物は必要不可欠であり、今以上に充実させなければいけないところもあります。
また、バスだけでなく首都圏などでは地下鉄を利用して実証実験がおこなわれています。

以上の2つの取組みは、地域住民の生活維持・向上が目的でした。しかし、事業として継続するためには採算が合わなければなりません。人口減少が著しい地方圏は、物量が少なく走行距離は長く、配送効率が悪い・・・地方の物流を考えると解決し難い問題が明らかに山積しています。今回のセミナーでは、そういった危機感を再確認しました。それと同時に国や地方行政、他業界、地域住民が物流を無視できない状況にきていることも実感しました。物流に携わる者として、今までにない相手とコラボレーションできるよう柔軟な対応力を磨かなければならないのかもしれません。

(文責:北川 明香)

【参考】
iJAMP自治体実務セミナー
「新たな物流が地域の課題を解決する~物流の底力~」』(主催:時事通信社 2016.11.21)
https://www.zck.or.jp/uploaded/attachment/1117.pdf

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第346号 2016年12月7日)

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