ロジスティクスのエキスパート不足の背景には日本の高等教育の抱える問題が

物流課題の根本にあるもの

弊社がコンサルティングを実行した各クライアントが抱える物流課題の根本的な原因には、幾つかの共通点があります。

その中で、特に私が感じるのは「ロジスティクスの知識・経験を持った人材」の不足です。

企業によっては、ロジスティクスを管理する専門組織すら存在しないこともあり、人材を確保する必要性をあまり意識していなかったとも考えられます。一方で、物流企業における実態も、入社後に実務を経験して初めてロジスティクスを学ぶことが多く、短期的な人材育成・研修プログラムを導入している企業はあるものの、採用の段階からエキスパートの育成を見据えた専門知識のある学生を獲得しているケースは稀ではないでしょうか。そもそも、そのような学生がいないという一面もあります。

私は以前、物流業界において、本格的なロジスティクスのエキスパートを輩出できるような取り組みができないかと、物流企業が実施している従来のインターンシップを見直し、独自のプログラムを開発して、学生を募ったことがあります。その際、日本国内においてロジスティクスやSCMを学ぶ専門学科もしくは学部を有する大学にアピールしようと調査しましたが、残念ながら、そのような大学はほとんどありませんでした。先述したロジスティクスの人材不足の根源は、こうした実態にも顕著にあらわれています。

ロジスティクス教育で世界に遅れを取る日本

公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(以下、JILS)のレポートによると、Eduniversal社が調査した世界の修士課程を科目別で集計した大学ランキングで、「Supply chain and logistics」の科目におけるランキングでは、TOP100校の中に日本の大学がランクインしていません。ちなみに1位は米国のMassachusetts Institute of Technology(MIT)で、以下2位米国、3位ポルトガル、4位ペルー、5位フランスの大学と続き、アジア太平洋地域の最高ランクはオーストラリアのシドニー大学が18位です。

日本におけるこのような教育実態の背景には、米国のような広大な地域でロジスティクスを考え、サプライチェーンを最適化することを論理的に学ぶ必要性があった国と日本のような狭小国との環境の相違が考えられます。ロジスティクスシステム構築の模範ともいわれるウォールマートも、それを担うロジスティクス・SCMの専門知識を有する人材が自ずと必要とされてきたといえます。

弊社はJILSが主催する物流技術管理士資格認定講座をはじめ、国際物流管理士資格認定講座など、幾つかの物流関連資格の講座におけるカリキュラムを担当していますが、ここ数年受講者層に変化がみられます。特に、東京地区において開催する講座については、受講対象者の職種が、物流事業者よりも荷主の立場になる職種の方が増加傾向にあるのです。変化の激しい社会情勢や最新テクノロジーの台頭、さらに物流業界が抱える様々な課題を前に、ロジスティクスやSCMのエキスパートを社内で育成しようという企業意識が高まりつつあるのではないかと感じています。個人的には、日本の大学機関においても、益々加速するグローバルビジネスを見据えたロジスティクスやSCMの専門知識を教育する大学が増えることを期待しています。

教育の成果は、長期的視野に立って考える必要がありますが、その投資を惜しむことなく着実に取り組み、将来的には、企業組織にCLO(チーフ・ロジスティクス・オフィサー)が存在し、更に同CLO経験者が経営トップになるような状況が増えてくれば、日本企業の更なる成長が見込めるかもしれません。

(文責:貞 勝利)

【参考】
ロジスティクス強調月間2019」公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第415号 2019年10月2日)

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