前回はマーケティング戦略構築における現状分析(ステップ1)の顧客分析における顧客のインサイト(潜在的欲求)とニーズがテーマでした。
今回は競合分析の軸となる業界構造分析について説明したいと思います。
業界構造分析とは
読者の皆さんは日々の活動でこのような場面に遭遇したことはないでしょうか。
・社内規定で複数社から見積を取る必要があるが、どのような企業が候補になるか分からない。(荷主企業担当者)
・自社のサービスの優位性や顧客への訴求ポイントが分からない。(物流企業担当者)
競合分析を十分に行うことで、上記のような困りごとを減らすことができるかもしれません。
物流事業者の立場では、競合を理解した上で自社の強みをしっかり訴求することによって、成約率の向上につながると言えるでしょう。一方で、荷主企業の立場では、競合がどのような物流事業者を起用しているかを把握することで、物流領域での差別化要素の抽出や新たな物流業務委託先の開拓につながります。
競合分析で最初に着手をおすすめしたいのが、売り手の集合体である業界の構造を分析することです。個別の企業に関する詳細な情報を分析する前に、まずは自社を含めた売り手グループがどのような状況に置かれているかを明らかにする必要があります。
業界構造とは5つの要素で構成されています。読者の皆さんにとっては、業界構造分析よりもファイブフォース分析という呼称の方が馴染み深いかもしれません。
・買い手の交渉力
・売り手の交渉力
・新規参入の脅威
・代替品の脅威
・既存業者間の競争
日頃相対している取引先の交渉力に関する情報が集中しがちですが、それぞれの要素に対してなるべく均等に情報を整理することが望ましいです。また、各要素にチェック項目を設けて、それぞれを定量化するのも良いでしょう。イメージが湧きにくい方は、弊社が過去に実施した業界構造分析(新聞輸送)の資料を参考にしてみてください。
今回は競合分析の業界構造分析について説明しました。自社を含む売り手グループが置かれた状況を理解するだけでなく、競合企業となる企業の戦略を分析しなければ、具体的な活動にはつながりません。次回は競合分析における競合の戦略分析について紹介したいと思います。
(文責:野尻 達郎)
【参考資料】
『産業財マーケティング・マネジメント(理論編)』マイケル・D・ハット、トーマス・W・スペイ
『戦略的産業財マーケティング』笠原英一
「3PL事業におけるマーケティング1」『流通ネットワーキング』,324号,pp.58-62 野尻達郎
「3PL事業におけるマーケティング2」『流通ネットワーキング』,329号,pp.52-56 野尻達郎
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