「ひとつだけでは多すぎる」:物流とレジリエンス

はじめに

表題は、故・外山滋比古氏の『思考の整理学』からの引用です。

同著では、アメリカの女流作家ウィル・キャザーの言葉「(恋人が)ひとりでは多すぎる。ひとりではすべてを奪ってしまう。」を参考に、思考においても小さな着想・独創にかまけず、先人の業績も参考に複数の思考を調和折衝させるよう議論しています。

何かを選択するということは他の選択肢を選択しなかったことの裏返しです。何かしらの行動を選択する際に他の選択肢との調和折衝を鑑みず削除すると、行動がひとつの選択肢に適合しすぎるが故に、他の選択肢を選択することが難しくなります。

ひとつのやり方に合わせ過ぎることのリスク

例えば、平成30年7月豪雨にて山陽線が長期不通となった際、鉄道運送から海上運送に切り替えようとしても、JRコンテナの規格と海上コンテナの規格は異なるために簡単には切り替えできず、またトラック運送に切り替えようとしても輸送量では及ばないという事態が生じました。

過去、レジリエンスは上記のような自然災害や政治的混乱のようなサプライチェーンに対するマイナスの事態に対する文脈で議論されることが多かったのですが、新型コロナウイルス感染拡大は従業員の安全確保のための生産の一時停止というサプライチェーンに対するマイナスの変化と同時にエンドユーザー側の変化が生じました。

店舗がエンドユーザーとのチャネルとなる流通システムでは、利用までのラストワンマイルはエンドユーザーが行うことを前提としていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でエンドユーザーの移動は大きく制限され、ラストワンマイルのあり方が変わりました。エンドユーザー側に変化があれば、ロジスティクスにも大きな変化が求められ、全体適正を起点から見直すことが重要になります。

ロジスティクスは動態的なものであり、社会の不確実性が高まる中においてはアジリティであることが求められます。日頃からロジスティクスのあり方を考えるに際しても、コストベースでの静態的な適正解にのみフォーカスするのではなく、不確実な変化を前提に、変化への適正解を算出する能力の向上と、その解を実現するために、あらかじめ複数の選択肢の調和折衝を意識することが重要だと思います。

(文責:松室 伊織)

<参考資料>
外山滋比古.『思考の整理学』ちくま文庫 . 1986年4年

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第453号 2021年5月12日)

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