宅配便問題を考える:送料を安く見せるECには限界がある

運賃を払っている感覚が希薄になるEC

最近物流業界が注目されることが多くなっていますが、ヤマト運輸のサービス内容改定と値上げは、大きく報道され皆さんもご存知のことと思います。

消費者として宅配便を使う時、東京から大阪に1個で1,000円以上の料金がかかっていましたので、「高い」と感じておりました。今回この価格が値上げとなると聞いて、利用する回数は少ないながらもちょっとショックでした。全体構成比率の高い法人貨物の値上げだけにしていただきたかったところです。

このように個人で宅配を利用するとその価格に対する意識があります。しかしながら、通信販売(EC)では、送料が無料であったり、値引きをしてくれたりするため運賃を支払っている感覚が希薄になります。店舗で触ってみたり、サイズを確認したりする必要がない場合は、ECサイトで購入したほうがずっと便利ですし安い場合も多いですから、多くの人が利用し、結果として宅配貨物が増加してきているわけです。また中には、サイズが不明なため同じ商品のサイズ違いを数点注文し、サイズが合わないものを返品するという場合もあると聞きますので、さらに宅配便の貨物は増えることになります。

送料が安いことは消費者にとっては便利でうれしいことですが、実際は商品価格の中に運賃がすべてもしくは一部が含まれて、隠れてしまっているだけです。送料は無料、もしくは極めて安いものだという感覚になる価格表示が問題ではないでしょうか。

調達物流の運賃として考えてみると

調達物流の効率化をしようとしたときの壁は、製品価格に含まれる物流費がいくらかということが明確でないため効果が試算しづらいことです。納品されている商品を発地に取りに行ったら、配送分のコストがなくなるのでいくらになるかという場合、販売側は商品原価を高くしたいので物流費は安いと主張し、購入側は効果を出すために物流費はかかっているはずだと主張をします。

いろいろな要素で結論が導かれることと思いますので、この後はいろいろでしょう。最初から商品価格と物流費を分離していたらよかったのですが、すべてが包含された価格設定になっているからこのようなことが起こるわけです。

これだけ物流が社会問題化していますので、例えばECでは「商品価格と物流費を分けて明示する」というルールにしてはいかがでしょうか。そうすれば、より上手に宅配便を使えるようになるのではないでしょうか。

今回は宅配便価格に関することでしたが、再配達も大きな問題ですので、次の機会にはこちらも考えてみたいと思います。

(文責:中谷 祐治)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第359号 2017年5月31日)

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