2026年4月に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(以下、改正物効法)」が施行され、すべての荷主事業者に対して物流効率化に向けた取組の努力義務が課されました。
年間取扱重量9万トンを超える特定荷主に該当する企業では、5月末までの届出対応を無事に終え、現在は2026年10月の中長期計画提出に向けた検討を進めている企業様も多いのではないでしょうか。
一方で、「とりあえず目標値は設定したものの、実態を伴うアクションプランまで落とし込めていない」という声も多く聞かれます。
こうした状況に陥ってしまう背景には、物流効率化を全社課題として捉えきれず、物流部門中心の取り組みに留まってしまっていることがあるのではないでしょうか。
しかし、今回の法改正への対応は、物流部門だけで完結できるものではありません。調達・生産・営業を含めた全社最適、さらには企業間連携まで含めた経営レベルの意思決定が求められています。
本稿では、なぜ物効法対応が物流部門だけでは成立しないのか、その背景と必要な視点について整理します。
従来の物流部門の立ち位置
まず押さえたいのは、多くの企業における物流部門の立ち位置です。
従来、物流改善と言えば、配送費の削減や倉庫費用の圧縮など、コストの最適化が主なテーマでした。KPIも、物流費率や配送単価など、部分最適の指標が中心となっている企業様が多いかと思います。
一方で、現在物流に求められているのは、従来のように倉庫や配送の効率化だけを考えることではありません。物流を「現場機能」ではなく、「経営課題」として捉え、在庫方針やサービス水準、拠点配置まで含めて、企業全体で物流を考える経営視点です。

なぜ物流部門だけでは物効法対応が進まないのか
例えば、積載率を改善しようとしても、「営業が小口多頻度受注を続ける」「生産が短納期前提で計画を組む」などの要因で、改善がなかなか進まないといった問題に、頭を悩ませている方も多いかと思います。また、企業活動においては、各部門の目的がトレードオフの関係になることも少なくありません。例えば、欠品をゼロにしようとすれば在庫は増えやすくなり、短納期対応を追求すれば小口配送や緊急輸送も増加します。
つまり、各部門の最適化が、結果として物流負荷を高めてしまう構造が存在しているのです。

この図が示すように、物流部門だけが努力しても限界があります。つまり、物流課題の多くは物流の中ではなく、物流の手前で発生しているのです。
だからこそ、物効法対応には部門横断での取り組みが不可欠であり、物流部門だけでなく、営業・調達・生産・SCM・経営層まで含めた意思決定が必要です。
CLOに求められる役割とは
こうした全社横断の意思決定を担う役割として制度化されたのが、物流統括管理者(CLO)です。
CLOは単なる物流部門の責任者という位置づけではありません。制度上も、事業運営上の重要な意思決定に関与できる管理的立場の者を選任することが求められています。
これは、改正物効法対応が物流部門だけで完結する課題ではなく、営業・生産・調達などを含めた全社横断の意思決定そのものだからです。
CLOに求められているのは、物流改善だけではなく、各部門の利害を調整しながら、全社最適を推進していく役割です。
さらに、物流改革は自社だけで完結するものではありません。納品条件の見直しやリードタイムの調整、共同配送などの施策は、荷主企業、物流事業者、納品先など、複数企業との連携が不可欠です。
その結果、CLOには社内調整だけでなく、取引先も含めた物流全体の最適化を推進していく視点と推進力が求められます。
部門間の調整には「説得力のあるデータの提示」が必要
こうした社内外の調整や交渉を前に進めるうえで、部門間の共通言語となるのが、データです。
例えば、「どの拠点で非効率が発生しているのか」「配送頻度を見直すことで積載率がどの程度改善するのか」などを定量的に示せなければ、部門間の議論や取引先との交渉は感覚論になりやすく、合意形成も進みません。
つまり、データを基に意思決定を行い、部門横断や企業間で共通認識を持ちながら調整を進めていくことが、物流課題の本質的な解決に繋がるのです。逆に言えば、物流データを現場の実績管理ではなく、経営判断に活用できる情報として扱うことができれば、物流改革を前に進めやすくなるのではないでしょうか。
物効法対応で本当に問われているもの
繰り返しになりますが、今回改正された物効法では、「物流を経営課題として扱えるか」が問われています。
物流部門だけに任せるのではなく、全社最適の視点で意思決定を行えるかどうか。その差が、今後の物流競争力を大きく左右していくのではないでしょうか。
また、物効法対応をやらなければならない義務として捉えるだけではなく、自社の物流構造を見直す契機として活用できるかも重要です。
まずは、自社の物流データを見える化し、どこに課題があるのかを部門横断で共有すること。そこから、営業・生産・調達を巻き込んだ、本当の物流改革が始まります。
物流を単なるコストではなく、競争力を生み出す経営の武器へ変えていけるかが、企業に求められています。
(文責:益田 善綱)
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