「物流の2024年問題」 発着荷主を巻き込み打開策を

トラック輸配送の効率化、まだまだ出来ることが

546号を担当いたします狭間です。

 2024年問題、物流はどうなる?と言われもうすぐ半年になろうとしています。ドライバー不足、拘束時間規制の対応が求められ、物流業界としての課題が山積みとなる中、何もしなければ2019年度と比較し、2024年度には総物量の14%、2030年度には34%の輸送能力が低下してしまうという試算結果も出ています。

 この“何もしなければ”とありますが、逆に何かをすれば輸送能力は低下しない、という見方ができるのではないでしょうか。実際、物流上で非効率な部分はたくさんあります。例えば、トラック輸配送の平均積載率は40%を切っていると言われています。同じ方面に2台、それぞれ40%、40%の積載率のトラックで貨物が輸送されているようなことが日々起きているかもしれません。その非効率なポイントは下記3つが考えられます。

1)出荷指図の確定時刻がバラバラである
2)それぞれ配達先に時間指定があり、積み合せても2軒目の到着時刻に間に合わない
3)配達先で時間がかかる(待機時間、取り卸しの作業時間)

等です。

 これを、1台にまとめて積載率80%で輸送を行い、配送効率を上げることができないでしょうか。

配送効率を上げるには

 解決策のステップ(例)は下記の通りです。

STEP1 発荷主によるオーダー締め切り時間と積込みタイミングの統一
STEP2 着荷主による時間指定の緩和
STEP3 着荷主による取り卸し作業環境の見直し(車上受け車上渡し・待機時間削減)

 まずSTEP1について、積み込むタイミングを統一することが必要です。両方の貨物とも出荷日の夕方ギリギリまでオーダーを受付け、夜遅くまで積込みがかかるようでは拘束時間が超過し1台に積み込むことができず、トラックを2台に分けざるを得ません。出荷日の前日、遅くとも出荷日当日の午前中までにオーダーを締切り、余裕をもった積み込みを行うことが必須条件となります。

 次にSTEP2について、2つの配達先は密集度の低い離れた同地域にあり他に全く貨物がないという前提を置くと、着荷主側の条件を緩和しないことには物理的に改善不可であると考えます。例えば、2つのオーダーの着時間が互いに9:00着指定であった場合は、必ず2台の車が必要になります。よって、せめて『午前中納品』といった枠を設けた指定に変更するか、時間指定をなくしてもらえないかを着荷主と調整し、時間に余裕を持たせることで、1軒目を9:00配達、2軒目を13:00配達といった形でルート組みを行うことができます。

 次にSTEP3について、配達先での所要時間が長ければ、配送効率を上げることはできません。他の貨物の取卸しによる順番待ちや、貨物の取卸し自体にかかる作業時間が長ければ、次の納品先へ行くことができません。国土交通省の調査では、配達先での平均待機時間は1台当たり1時間34分にも及びます。これらの対策としては、まず着荷主側での作業体制の見直しによる車上受け車上渡しの徹底です。この取り卸し作業はドライバーが一人で行っているケースもあり、作業負荷と時間がかかり下手をすれば1軒のみの配達で終了することもあります。取卸し作業が料金化され、契約として取り決められていれば仕方ない部分もありますが、ない場合は作業を着荷主に実施してもらうように働きかけ、作業負荷を軽減し時間短縮に繋げることが必要です。

 次に、待機時間の対策としては、スマートフォンを使ったトラック設置バース受付けのアプリ導入が挙げられます。荷受け側とドライバーで事前に入門する時間を可視化することで円滑な取り卸し体制を構築し、スムーズな納品に繋げられることが期待できます。いずれも荷主を巻き込んで意識改革を行い、改善する必要があります。

 STEP1、2、3を改善し、下地が整った状態で初めて配送効率の向上が期待できます。物流条件が偶然にも一致する貨物だけを積み合わせするだけでは限定的な範囲での配送となり、効果の広がりが期待できません。まずは貨物を出す側、受け取る側の改善協力が最優先です。

 幸い、荷主側の条件緩和の必然性がメディアでも大きく取り上げられていますので、発荷主も着荷主も協力的に動いていただくケースは増えています(2000年以前は考えられませんでした。)。私たち一人ひとりが社会課題としてターニングポイントとなっているこの時期を契機ととらえ、発荷主や着荷主に働きかけ、物流のムダを取り払っていきましょう。

(文責:狭間 敦史)

参考文献

国土交通省「持続可能な物流実現に向けた検討会 最終とりまとめ 2023年8月001620626.pdf (mlit.go.jp)

国土交通省 トラック輸送状況の実態調査結果(概要版)令和3年1月~3月 

001409523.pdf (mlit.go.jp)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第546号 2024年9月11日)

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