前稿では、物流業界におけるESGへの取り組みについて、Environment(環境)の分野についてお伝えしました。
本稿では、ESGのSocial(社会) と Governance(企業統治)について、事例を取り上げてご紹介いたします。
ESGのS: Social(社会)
Social(社会)は、労働条件・社会貢献・雇用関係・強制労働・人権などに関する取り組みを指します。
労働環境の改善
物流業界では、長時間労働や人手不足が問題となっております。2024年問題により、年間時間外労働時間の上限が制限されることで長時間労働は改善される方向ですが、労働時間が減る分ドライバーの収入が減少し離職に繋がるといった懸念点もあります。持続的な企業活動のためには、適正な労働時間の遵守だけでなく、賃金の引き上げや福利厚生の充実などが求められます。
ロボット導入による倉庫の機械化やパレット活用によるバラ積みの廃止など、労働者の作業負担を低減させる取り組みも効果的です。労働環境を整えることで、従業員の採用強化・定着化が見込めます。
社会貢献活動への取り組み
物流企業に限らず献血や地域の清掃活動などの社会貢献への取り組みも重要です。投資家や一般の方から評価されることで、企業価値の向上につながります。
ESGのG: Governance(企業統治
Governance(企業統治)は、役員報酬・役員構成・契約内容・贈収賄・多様性・税務戦略などに関する取り組みを指します。
企業の情報開示
組織の透明性や公平性は、株主からの信頼の獲得・円滑な資金調達に繋がります。先に述べたような労働時間に対する法令遵守、従業員と企業の双方にメリットがあります。
例えば、ドライバーの長時間労働の要因のひとつに、荷主との契約に定めがない荷役作業などがあげられます。想定外の業務により当初の運行計画が崩れ、基準を超過する状況を招いてしまいます。ドライバーの負担低減やステークホルダーとの公平な取引のためにも、契約内容を明確化し、問題がある場合は見直すことが求められます。
まとめ
ESGについては、明確な目標を定めにくい、成果が出るまで時間がかかる、人手不足により長時間労働が改善できないなど、さまざまな理由で取り組みが進んでいない企業も多いかと思います。しかしながら、長期的な企業活動のためには、ESGを意識した経営は重要な要素のひとつとなっています。企業が抱えているESG課題と企業戦略が密接に結びついた取り組みを行うことが、真に価値のあるESG経営となります。
今回紹介させていただいた事例はごく一部ではありますが、ESG経営を検討する際の参考にしていただけますと幸いです。
(文責:益田 善綱)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第523号 2024年2月14日)
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