物流逼迫の背景
物流逼迫は、ここ数年で顕在化し深刻化してきました。この背景にあるのは、主に以下の3要因と考えられます。
(1)人手不足/ドライバー不足
今や業界不問で人手不足の状態にあり、直近の6月の有効求人倍率は1.19倍で、1992年3月以来の高い水準が続いている。この内、自動車運転の職業の有効求人倍率は1.95倍となっており、平均より高い水準で推移している。
また、国土交通省の推計では輸送・機械運転従事者数が、10年後までに現在より22%減少する見込となっており、ドライバー不足は解消されない見通しにある。
(2)長期にわたる車両数減少
国土交通省 自動車輸送統計年報では、1997年度以降、輸送トン数、トレーラーを含む登録トラック台数共に減少しており、2013年度は輸送トン数437千万トン、登録トラック台数607万台となっている。これは、1997年度に対し輸送トン数で△28%、登録トラック台数で△31%である。
(3)コンプライアンスの厳格化
国土交通省、厚生労働省では、車両事故防止の社会的要請を受け、過労運転防止に向けた労働時間管理の厳格化を進めています。いわゆる改善基準では、1日の労働時間を原則13時間(月間293時間)とし、違反した場合や管理に不備があった場合には、事業所の監査や行政処分を課して、管理水準の向上と労働時間短縮化の取組を進めている。
こうした背景の中で、労働時間制約による長距離輸送の受託事業者減少や、荷積み/荷降し待ち等の待機時間を伴う輸送の敬遠による輸送力確保不足等と共に、運賃上昇という形で、顕在化してきました。
当然ながら、上記要因に加え、東日本大震災からの復興需要や景気回復に伴う物量増などの、いわゆる物流固有要因外の要因による輸送力確保不足も大きく影響しています。
運賃上昇の水準と取引条件
全日本トラック協会が公表している「求荷求車情報ネットワーク(WebKIT)成約運賃指数」では、2015年7月の運賃水準は2010年4月に対し114となっています。これまでの推移では、2013年8月から110を超える水準となり、消費増税直前の2014年3月には126の最高水準となりました。2015年は、115程度の水準で推移しています。
こうした運賃上昇は2013年度から顕著となっており、この2年間の大きな環境変化と言えます。
こうした物流環境の中で、企業間をまたがるサプライチェーンを物流が取り結んでいます。もとよりサプライチェーン上には、物流の他にも商流や情報、お金が流れています。この物流、商流、情報、お金は、取引の成立により発生する事から、企業間の取引条件によってその流れ方が約束されています。
取引条件とは
取引条件は、販売条件、受注条件、納入条件、決済条件から成り立っています。
販売条件:対象アイテムや製品仕様、標準品、特注品等の分類、販売価格、数量、納入リードタイム、返品、販売ルート等の見積内容に関する事項
受注条件:注文受付手続きや受付期間/時間、注文ロットサイズ、変更/キャンセルの手続き等の受注成立の条件と手続きに関する事項
納入条件:注文品の引渡し条件、納入時の付帯作業、時間指定、輸送手段と車種・車型、荷積み/荷降し待ちの条件、引取等の納入時の条件に関する事項
決済条件:売上計上(請求対象)の条件、請求書発行の手続き、代金支払方法、代金支払期日、債権・債務残高確認等の請求/支払手続きに関する事項
この内物流活動では、決済条件を除く3条件が密接な関係にあります。
特に物流活動と密接な関係にあるのは、販売条件では納入リードタイム、受注条件では注文の受付期間/時間、注文ロットサイズ、納入条件ではその全てとなるのは、ご理解頂けると思います。
【後編】へつづく
(文責:難波 博昭)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第293号 2015年9月9日)