物流倉庫における在庫(商品)回転率と保管・仮置きスペースの関係

先日、菓子加工食品を扱う物流現場の改善にお伺いしました。

倉庫拠点の担当者に在庫(商品)回転率と保管・仮置きスペースについてヒアリングをしましたが、その際に気になった点がありましたので今回はその点について書きたいと思います。

物量ベースで把握する在庫回転率

在庫(商品)回転率と言うと財務・経営分析では一般的な指標として金額ベースで計算されますが、物流面の特に倉庫拠点では物量ベース(ケース数、パレット数、立米数等)で管理している指標です。各物流会社さんでも扱いSKUまたはアイテム別にWMSまたは在庫表からExcel等で物流KPIとして把握しているかと思います。

今回はモデル試算として表1のような場合を考えます。

(表1)物量と在庫回転率(pl:パレット)
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※パレット保管生産性:4pl/坪(仮定)

皆さんはこの場合どの位のスペースが必要だと思われますか?

保管スペースは、100pl/日÷4pl/坪=25坪/日になります。

一方必要スペースは、在庫回転率が50%程度であれば、保管スペース=必要スペースとなるかも知れませんが、今回のように在庫回転率が100%~500%まである場合は、保管スペース以外に仮置きスペースが “それなり” に必要になります

この“それなり”に必要とは日当たり出庫量や稼働時間との兼ね合いで決まりますので、その関係性を表2にまとめてみました。(※今回は当日受注・当日出荷を前提とします。)

(表2)月間稼働日数と日当たり出庫量
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※月間稼働日数:25日
※仮置きスペース生産性:1.5パレット/坪(仮定)
(入荷は午前中、出荷は午後の場合)

まずは稼働日が月曜日から土曜日の場合は月25日稼働となり、日当たり出庫量は4pl~20plとなります。

次に仮置きスペースは3坪/日~13坪/日が必要となり、保管スペース(25坪/日)と合わせて合計で必要スペースは28坪/日~38坪/日になります。

このモデル試算の場合、表2の通り、在庫回転率が100%増えるごとに保管:仮置きスペースは11%ずつ増えている点に注意が必要です。

仮置きスペース率の再計算から物流改善へ

実は今回の担当者との会話の中で一番気になったのがこの点です。今回の現場は前述の通り菓子加工食品を扱っていて在庫(商品)回転率が300%~600%と比較的高回転品がメインの拠点でした。

担当者は保管と仮置きスペース比率を経験や感覚的に100:25と仰っていました。しかしモデル試算にある通り、例えば在庫回転率が400%の場合、仮置きスペース率は43%となり経験・感覚値では18%不足することになります。その結果、狭いスペースでの作業となり作業生産性が悪化していました。この点を比率として把握することで改善への糸口を見出すことができました。

このように“それなり”の仮置きスペースが必要なことは経験や感覚的にわかっているものの、それが在庫回転率とどのような関係にあるのか比率として把握できていない場合があると思います。簡単なモデルで試算してみましたので、ぜひ皆さんの現場における保管と仮置きスペース比率と比較してみてはいかがでしょうか?

最後に興味のある方は以下の考察を参考にしてみて下さい。

(文責:濱野 高益)

【考察】

稼働日数が減った場合、日当たり出庫量が増えるため仮置きスペースは更に必要となりますので表3を参照して下さい。

但し、月間稼働日数5日の場合、保管・仮置きスペースが1ヶ月を通して38坪~92坪必要ではなく、出荷作業日に必要となるので、入出荷が発生しない不稼働日は仮置きスペース(13坪~67坪)を別業務に転用することができます。

この別業務への転用は週4日(月17日)以下であれば検討する余地があると思います。

(表3)必要スペース
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その他の注意点として、入庫の物量波動が大きい場合や入庫業務が午前中だけでは終わらず出庫時間にかかる場合、一次格納スペースも必要となりますのでご留意ください。(一次格納3パレット/坪時、1坪~7坪)

(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第333号 2016年8月31日)

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