トラック運転手の労災対策をしないと「荷主も」コンプライアンス違反ですよ!

今回は、私が弊社の営業所にて配車業務に従事していた経験やその他のいろいろな業務の中から、トラック運転手の労災対策についてお話ししたいと思います。

荷主の担当者は運行管理上のコンプライアンスに対する意識が高く、例えば一般道での速度規制の中での運行では納品日時指定に間に合わない等、ご希望の運行が法律に抵触する場合には、納品日時指定の変更や高速道路利用に伴う料金実質負担などの代替案を提示し、ご理解を頂く場面が多々ありました。
他方において、トラック運転手の作業環境、特に配送先構内の中にはお世辞にも作業環境が良いとはいえないところもありました。
運送会社側から荷主の担当者に労働災害(以下、労災)が発生しないように改善を求め進言するも、「販売先のことなので営業担当者を通じて話してもらう」といわれ、結果として改善はなかなか進みませんでした。
その為、運送会社側は「配送先にとって自社は直接の取引関係にない他社なので、改善を求めても無駄なのではないか?
そもそも、荷主としてはお客様に当たる配送先に、運送会社に代わって、トラック運転手の労災対策の改善を求めることはできるのか?
運送会社側ではトラック運転手に日々注意を促し、運送会社側としてできる限りの物理的対策を講じても、対策はとても十分とはいえない」と考えてしまうようです。

果たして、トラック運転手の労災対策は運送会社側のみの責任でしょうか?
刑事責任上、確かに、労働安全衛生法第1章全般において使用者は直接雇用する労働者に関する災害防止のための措置を講ずる責任を負うことが規定されている為、一般的にはトラック運転手に関する災害防止措置にかかる責任は使用者である運送会社が負うことになります。
但し、同法29条では「元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならない」と規定されており、直接雇用する労働者以外の者の労働災害防止についても責任を負う場合も想定していることから、元方事業者の災害防止にかかる責任の対象にトラック運転手が含まれる可能性があるといえます。なお、使用人であるか否かを問わず、労働災害が発生していない場合でも、違反が成立し、処罰の対象となる場合もあります。
※元方事業者:1つの場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせる事業者。

他方において民事責任上、自衛隊八戸車両整備工場損害賠償判決(最高裁昭和50年2月25日第三小法廷判決)、川義事件判決(最高裁昭和59年4月10日第三小法廷判決)等により積み重ねられた概念である安全配慮義務についても、『一般的には』トラック運転手と労働契約を交わす運送会社が負う責任とされています。
但し、三菱重工業神戸造船所事件判決(最高裁平成3年4月11日第一小法廷判決)においては、「(1)上告人(元請事業者)の管理する設備、工具等を用い、(2)事実上上告人の指揮、監督を受けて稼働し、(3)その作業内容も上告人の注文者の従業員であるいわゆる本工とほとんど同じであったというのであり、このような事実関係のもとにおいては、上告人は下請事業者の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので、信義則上、右労働者に対し安全配慮義務を負うものであるとした原審の判断は、正当として是認できる」と判決されており、上記(1)から(3)のような条件を満たす場合には、直接の雇用関係になくとも、安全配慮義務を負う場合があります。

なお、上記の安全配慮義務違反による債務不履行責任(民法第415条)以外にも、配送元や配送先がトラック運転手に対する不法行為責任(民法第709条)もしくは使用者責任(民法第715条)に問われる場合もあります。以下、2件事例を紹介します。

事例1.)
札幌地裁判決 昭和62年8月27日:被災時の作業分担から、鋼材の運搬を発注した会社(発注先会社)と、鋼材の運搬を請け負った会社の従業員であるトラック運転手との間に、雇用関係と同様の法律関係を認めず、安全配慮義務に関する債務不履行責任は否定されたものの、発注会社の注意義務違反を認定して民法第715条の使用者責任を認定した
※出典:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社『荷主等向け荷役災害防止セミナー~荷主等の構内でのトラックからの墜落・転落災害を防止しましょう~』P.21より引用。

事例2.)
東京地裁判決 平成8年7月31日:A社作業現場にある鋼材をクレーンでトラックに積み込む作業をしていたA社代表者をB社トラック運転手が自発的に手伝っていたところ、積まれていた鋼材が崩れてB社トラック運転手が被災した事故において、A社代表者が運転手の助力を承諾し、共同で作業を行なっていたという事情があるときは、A社代表者は鋼材が崩れて、運転手が受傷しないよう鋼材の積み上げ状況を点検しつつ作業を行う注意義務があり、本件ではそれを怠った過失があると判示した(民法第709条の不法行為責任)。B社に対しては、業務外の行動についてまで従業員に対し安全配慮義務や安全教育を行う義務を負わず、さらに事故がB社の管理の及ばない場面で発生しているなどの事情があるため、B社は損害賠償責任を負わないとした。
※出典:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社『荷主等向け荷役災害防止セミナー~荷主等の構内でのトラックからの墜落・転落災害を防止しましょう~』P.21より引用し、一部加筆。

結論は、トラック運転手の労災対策は運送会社のみならず、配送元、配送先も責任を負う場合があるということです。
本記事をご覧になられた荷主企業の皆様、また荷主企業から荷役業務を請け負う物流会社の皆様、慣れ親しんだ御社構内を改めてご覧下さい。
御社構内に出入りするすべてのトラック運転手が、安全に作業を行える環境はありますでしょうか?
トラック運転手は勤勉な者が多く、配送元と配送先のビジネスを繋ぐため、危険と隣り合わせの中、日々努力と疲労と我慢を重ねております。
荷主企業の皆様には、トラック運転手を他社の者としてではなく御社のサービスに貢献するメンバーとして捉えた上で、トラック運転手が安全に荷役作業を行えるよう、労災対策を進めて頂きたいと、強く願います。

(文責:松室)

■参考資料
・厚生労働省労働基準局
『陸上貨物運送事業の荷役作業における労働災害防止対策
(平成23年6月2日基発0602第13号)』
・東京海上日動リスクコンサルティング株式会社
『荷主等向け荷役災害防止セミナー~荷主等の構内でのトラックからの墜落・転落災害を防止しましょう~(平成24年度厚生労働省委託事業「陸上貨物運送事業における荷役災害防止対策推進事業」)』
(平成24年10月)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第253号 2014年6月18日)

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