移り香対策は万全?

少し前の話になりますが、某食品会社の複数の食品から防虫剤成分が検出され、それを食した人が嘔吐(おうと)するなどした問題が発生しました。
折しもその当時は中国製の冷凍食品への農薬混入事件が世間を騒がせており、「日本国内で製造された食品にも同じ事案が発生したのでは?」というニュースが世間を騒がせました。
その後販売店やその食品を製造した工場への立ち入り検査を実施し、問題の食品から検出された防虫剤成分(パラジクロロベンゼンおよびナフタレン)がいつの段階で混入されたのかを徹底調査しましたが、メーカー側が「製造時に混入した可能性は低く、保管時ににおいが移った疑いがある」との見解を表明しました(購入者がタンスに長期間保管したため防虫剤成分が製品に移った、といわれています)。容器のにおいに対する透過性が高く、タンス内の防虫剤の近くで保管すると気化した成分が容器を通って浸透し、内部の食品に付着してしまうことがメーカーの調査で判明し、その後容器の改良を実施したようです。
これがいわゆる「移り香」問題で、その後「移り香注意」という注意喚起が他メーカーのパッケージにも記載されるようになったと思います。この事件以降「移り香」という言葉のイメージがすっかり悪くなったような気がしますし、「移り香」の意味を理解できない購入者は少なからずいるようです。

今回のこの事案は購入者の家庭内での保管場所が起因となっていますが、メーカーで製品を製造してから最終消費者に届くまでのあいだにモノが留まる期間、いわゆる「輸配送」や「保管」が必要になるケースはメーカーの販売網や製品特性、消費地への納入条件などによって様々です。そして業務の大部分を請け負っているのが物流事業者になります。つまり、物流事業者は食の安全において大きな責任を担っていることになります。

今回は「保管」について触れます。保管場所の区分けはメーカーによって定められた基準に応じて決定していると思われますが、臭気が強い製品には木製パレットを使用しないなど、物流事業者側の判断で自主的に対策を打つことも必要です。

一般住宅にみられる「シックハウス症候群」と同様、新築あるいは改装直後の倉庫に保管する際にも竣工時期には揮発性有機化合物や臭気を発生する要因が存在します。臭気の持続期間については使用する薬品等でばらつきがあるため、施工事業者の見解をもとに、保管を開始する時期を検討することも対策のひとつと考えます。

新築倉庫における臭気の発生が考えられるものについては次のようなものがあります。
・床材(浸透表面強化剤)
・壁材の目止塗料
・防錆剤
・建具、コーナーガード等の塗装剤
・ケーブル等の電線被膜剤   ・・・・・等

この事件以降、特に食品メーカーの移り香対策要望が強くなってきている気がしますが、保管する製品の特性は様々なので画一的な対応は難しいと思います。しかしながら「移り香」に関する対策やルールが物流事業者側で明確に荷主に宣言できない限り、今回のような事故が発生した場合の過失は避けられないと感じています。
どんなに包装されていようと移り香を完全に防ぐことは難しいようなので、異臭発生物はできるだけ隔離し、他の荷物と長時間共存させないことが唯一無二の対策です。保管率の問題で隔離なんてとても、というのが正直な意見と思いますが、ルールの確立とともに、保管費の料金改定を含め荷主と検討していくべきテーマと考えます。

移り香問題は食品に限った話ではなく、衣料品やマスクなどに他の荷物の匂いが移ったという事例もあります。そういった事例を積み上げて、個人や事業所単位ではなく全社的な保管ルールをブラッシュアップしていくことが重要です。

(文責:伊藤 和城)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第314号 2016年2月17日)

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