TAPA認証にはさまざまなメリットがある

いつまでも日本は安全な国か?

昨年、大騒ぎになった食品異物混入事件、最近はその話題もニュースで耳にする機会がめっきり少なくなってきた。

結局、メタミドポス混入の犯人、及び過程は明確にされないまま迷宮入りするのだろうか。安全な食品を当然のように提供されると信じている我々(私だけだろうか?)にとっては、今までのように無意識に食べたいものを購入してがっついている場合ではなくなってきている。私自身、最近、商品を購入する場合、製造国、製造メーカーをチラリと確認している。確認したからといってどうなる事もないのだが、何か安心したいのだ。

このように安心(=安全)を当然のように受け入れていた我々(日本人)は、これからも今までと同じように安心して食事をするためには“信用のできるメーカー”の作った商品を選択しなければならない。

同じような事が物流業界にも置き換えていえるのでないだろうか。

荷主は自分の商品を物流事業者に委託するが、これは当然、預けた商品が安全にそして確実に希望しているお客様に届くと考える。しかし、保管中の紛失、配送途中の盗難など油断をすればなくなってしまうような環境下にその商品はおかれているのが実態である。日本人は性善説で物事を考える事が多い。人のものは誰も取ったりしないと信じている。例えば、スーパーの店先に商品を置いて売っている状況を目にする。日本ではこのような陳列(=店員の目の届かない場所)をしても商品は無くならないのである。しかし、海外では違うらしい。管理外におかれた商品は無くなって当然だという。

このように日本においては安全、安心が当たり前なのである。しかし、日本がグローバルな環境に徐々におかれてくるにつれて、この当然の安心をお客様に証明することが企業として必要となってくる。荷主は自分の製品を管理のしっかりした信用できる企業に任せたいと思うはずだ。

その物流業界で徐々に認知度が向上してきたセキュリティ認証のTAPAだ。大手フォワーダーを中心に、実際にTAPA取得に取り組む企業や関心を寄せる企業が増えている。それでは、「TAPA」について簡単に説明をしていこう。

TAPAとは

『TAPA』とは、Transported Asset Protection Association(技術資産保護協会)の略称。

製造―保管―輸送―納入までの製品の安全の確保(セキュリティ)を要求している。高付加価値商品の生産がアジアや南米地区に拡大しており、セキュリティの重要性を再認識したメーカーからのTAPA認証への期待度は高い。また、盗難、破損などによる損害保険への請求が増加傾向にあり、企業、損保会社双方のリスク軽減にも貢献すると考えられている。

TAPA保安要求事項

TAPA認証を受ける為には保安要求項目を倉庫/センター単位で満たす必要がある。

保安要求項目は、大項目8分類、個別要求73の項目(内、20項目が必須項目)により構成されており、各項目に対して、
◆  スコア0  : 全くない、活用されていない、採用・実施計画がない。
◆  スコア1  : 一般的なものがある。
◆  スコア2  : 厳密に実施され、最良慣行として採用されている。
の合計点数60%以上で合格となる。
また、どのレベルで合格したのかも分かるシステムになっている。

<合格レベル>
◆  Minimally Acceptable:146点満点の60~70%で合格。
◆  Acceptable146点満点の70~85%で合格。
◆  Exceeds Requirements:146点満点の85~100%で合格

≪TAPA保安要求事項 (抜粋)≫

1Perimeter Security
(周囲セキュリティ)
監視カメラ(CCTV)、照明、周囲の警報装置・
探知機、周囲の窓、戸口、及び他の開口部
2Access Control-
Office Areas
(入出管理(事務所区域))
事務所の入口
3Facility Dock/
Warehouse
(入出管理(施設ドック/)
倉庫)
事務所と施設/倉庫間の入出管理、入出制限、
貴重品保管区域、全ての施設/倉庫の外側戸
口の制限、監視カメラ
4Security Systems
(セキュリティシステム)
警備システムのモニタリング、侵入警報システ
ム、カードによる入出管理、警備システムの保守
5Security Procedures
(セキュリティ手順書)
手順書の適切な文書化、従業員経歴確認、
解雇した従業員及び下請け業者に関する手順
6Standard Truck
Security
Requirements
(標準トラックセキュリ
ティ事項)
適切なトラック防犯機器の導入、計画ルート
の遵守、似積み、及び荷受け
7Pre-Alerts
(事前警報(事故予防))
事前警報システムの確立及び実施
8Enhanced Security
Requirements
(警備の強化要求事項)
運転者の訓練、輸送車両の護衛、利用可能な
追跡システム

TAPAのメリット

  • TAPA認証取得をしている企業は業者選定において優位になる。
  • 企業の信頼性の向上によりビジネスチャンス(特に海外荷主)が拡大する。
  • 貨物保険会社との間の貨物保険料率が下がる。
  • 保管、輸送中の盗難・紛失事故を未然に防止することができる。
  • 盗難、紛失の事故が減少し無駄な損害賠償をしなくて済む。
  • 従業員のセキュリティー及び品質管理に対する認識が向上する。

上記より、TAPA認証を取得する事は、対外的セキュリティ対応の評価はもとより、取得企業にもビジネスチャンスの拡大、及び企業内意識向上に大いにメリットがあるといえる。

まとめ

現在の日本は治安が良い為、このような厳重なセキュリティシステムを導入する必要性があまり認識されていない。

また、TAPA認証を受ける事は物流事業者としての絶対の条件でもない。更には、TAPA認証はハード面(設備)の要求項目がかなり多くを占めており、TAPA認証を取得する為の投資コスト、及び認証に費やす時間がかなりかかってしまう。

しかしながら、今後、物流事業者はこれらのコストをかけても収受するメリットは大きいと考える。(前記述)これは、TAPA認証が現時点で企業の管理レベル、セキュリティレベルを図る一つの指標となっており、荷主(特に外資系や高額品を扱う企業)はTAPA認証取得企業を優先し選択していくと考えられるからである。また、グローバル化の波は、日本を欧米のようなセキュリティが必要な国にしていくのではないかと思うからである。

安全な国、日本。しかし、いつまでも他人の心情に頼った安全依願は続かない。現在の物流事業者がすぐに全ての倉庫/センターでTAPA認証を取得するという事は大変難しいが、今後の国際化の波に順応する為にも、先ず、ソフト的なセキュリティ対策(特にTAPA保安要求事項5~8)をはかり、その後にハード的な対策(CCTV設置など)を少しずつ行なっていっていくというのも一つの方法である。

一度、自社内のセキュリティ管理レベルを確認する為にもTAPA認証を受けてはいかがでしょうか?

(文責:後藤 武志 ・五島 定弘)

 【参考HP、文献】
「Transported Asset Protection Association」
https://www.tapaonline.org/new/engl/index.html
「物流ナビゲーション」
https://www.logi-navi.jp/tapa/
「株式会社イーエムエスジャパン」
https://www.emsjapan.co.jp/consulting/tapa/
「株式会社近鉄エクスプレス」
https://www.kwe.co.jp/
「NECネッツエスアイ」
https://www.nec.co.jp/techrep/ja/journal/g07/n02/070224.html

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