効率的な人員配置を考える:レイバースケジューリングとは

企業において、人件費をいかに効率的に圧縮するかはその売上利益率を向上させる上で非常に重要な問題であると共に、品質や就業環境を維持する上でも重要な項目の一つとして考えられます。

流においても人員効率を高める=作業人員の最適配置は非常に重要な項目であり、物流センター運営や3PL運営管理においても重点項目の一つとして挙げられます。人員効率を高めるためには物量波動の把握、作業生産性の管理、適正な人員配置等が必要です。

今回は、人員効率を高めるための管理手法としてレイバースケジューリングについて触れたいと思います。

レイバースケジューリングという考え方

突然ですが、レイバースケジューリング(LSP)という言葉をご存じでしょうか? 始まりはアメリカでの流通店舗運営における考え方で、約30年前に取り入れられた考え方でした。内容としては「仕事の量に合わせて従業員を配置する」というもので、「店舗で従業員をいかに効率的に作業従事できるようにするか」という発想でした。要は効率的な人員管理を行うというものです。

これは店舗運営において、提供するサービスレベル、同じ水準の商品を消費者(=顧客)へ提供するための考え方であり、結果ではなく、結果に至るまでの過程を重要視するプロセス主義的な視点で考えられています。

日本で、書籍やパッケージシステム等で取り上げられており、次第に普及し始めています。物流においても、特に物流センターでは従事する作業が多項目にわたり、かつ1日の人員数が非常に多人数になり、業務量より従業員が多いと人件費が過大となり、逆に少ないと顧客サービスが低下してしまいます。以上のような理由から、物流でもレイバースケジューリングによる人員管理が導入され始め、日本においてもここ10年前後から導入が始まっています。

レイバースケジューリング実装の準備

レイバースケジューリングにおける基本的概念として、「仕事量を正確に把握し、適正な人員(工数)を投入する」ということが挙げられます。

つまり作業員一人当たりの作業効率(=生産性)を高めるための管理ということになります(図1)。


図1.作業投入工数対人時生産性の相関イメージ

仕事量を正確に把握するため

(1)仕事に対してカテゴライズを行い、仕事の区分(アクティビティ)を決定する。
(2)アクティビティに対して、その業務(作業)範囲を明確にする。
(3)業務別に作業量(物量)と工数実績を把握し、蓄積する。

大きく、上記の3点が挙げられます。(1)、(2)は運用する際に管理や集計に支障が出ない単位に設定することが望ましく、また設定した範囲に関して全体で共通の認識を持つようにしなければなりません。(3)に関しては、日々の業務において作業量(物量)と工数の実績を蓄積していく必要がありますので、実績を管理するフォーマットやシートを作成しておくとよいと思われます。

また、管理者を一人ではなく複数おくことで日々管理を行っているか確認しながら実績を蓄積するのもよい方法です。工数については業務別日報等で集計を行うことは可能ですが、工数管理用のシステムを用いることで、より管理サイドの負担が減らすことができます。

適正な人員を投入するため

(1)作業ごとに1日のリードタイム(開始・終了の予定時間)を明確に設定しておく。
(2)アクティビティ毎に目標生産性(目標工数)を設定する。

上記2点が挙げられます。(1)において、作業ごとのリードタイムが明確でなければ、時間当たり工数を管理するための基準が明確でなく、日々の管理にばらつきが生じる可能性があります。また、運営におけるオペレーションフローと全体フローも明確になりません。(2)においては、生産性という具体的指標を設定することで、管理が機能しているかどうか判断することが可能になります。また、作業量と生産性の相関から曜日別・時間帯別の作業効率の傾向を掴むことも可能になります。

図2にⅠ、Ⅱに挙げたポイントをまとめます。

図2.重点項目

具体的な投入計画は、事前に作業量が分かる場合は作業毎の生産性を基に必要人員を割り出し、事前に仕事量が分からない場合は、過去の曜日別仕事量実績等から必要人員を割り出し、「誰が」「何時から何時まで」「どの作業を」「どの程度実施する」かについて決めることであり、従業員に作業指示しその実績を蓄積していく必要があります。

 蓄積した実績をどう活かしていくか

これまで、レイバースケジューリングにおける概念や導入するための準備事項について述べました。それでは、導入後に蓄積されていく実績をどのように活用すると効率化につながるのでしょうか。

効率化につながるポイントは、実績を蓄積し全体で共有することにより、運用の現状を把握し問題点や改善意識を共有するということではないでしょうか。内面的に存在している問題を業務区分化、実績把握及び数値化により明確にすることで現状把握が行い易くなります。特に大型物流センターにおいて、管理を担当している業務に関しては現状把握や問題点を考察することは行い易いですが、担当外になると難しいものです。そこで運用の現状を数値化し、全体で把握することで、担当外の業務に関しても現状や問題点を把握しやすくなります。

ところで、なぜ担当外の業務も把握する必要があるのでしょうか?それは作業人員の最適配置を行うためには、物流センター全体で最適配置でなければならないからです。なぜなら、センターでの業務は単体で存在するものは少なく、前後に他の業務が存在する場合の方が多いため、他との協調が必要になるためです。 また、日々の実績を蓄積し、業務管理者のみだけではなく実作業者へも実績をフィードバックすることで、作業者レベルでも効率化を意識した職場づくりを行うこともできるようになります。

今回は作業人員を最適配置するための手法としてレイバースケジューリングについて触れました。 最後になりましたが、効率化のレイバースケジューリングはその手法であって、日々の実績把握、問題点を把握するためのツールであることを忘れないようにしていただきたいと思います。どんなに正確な実績を把握し、問題点を抽出しても、改善への行動に移さない限り目的である効率化にはなりません。

(文責:コンサルティング事業部 第2グループ・段坂)

【参考文献】
1 森脇正文 (2004) レイバー・スケジューリング・プログラム(LSP)の導入手順と留意点,UNISYS TECHNOLOGY REVIEW,83,285-301.
2 村上忍 (2004) レイバースケジューリング,商業界.

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