物流現場における「属人化」と、それに伴う引き継ぎの難しさは、どの企業にも共通する悩みです。私自身、10年以上同じ部署で業務を担当してきましたが、この4月に部署異動となり、まさに“自分ごと”として引き継ぎに向き合うことになりました。本稿では、異動に伴う引き継ぎの経験から見えてきたことを、問題点、課題、改善の順に整理してお伝えします。
問題点:業務の背景や判断基準が十分に整理・共有できていなかった
今回の引き継ぎで浮き彫りになった最大の問題は、一定のマニュアルや資料は整理していたものの、業務の背景や判断基準までは十分に整理・共有できていなかったという点です。
私が担当していたのは、3PL運営支援として、主にシステム運用やマスタ管理を行う業務です。作業手順そのものはマニュアル化していましたが、実際に進める際には、複数のシステムの関係性、データの意味、過去の経緯、契約条件などを踏まえて判断する場面が多くありました。
後任者にとっては、目の前に資料やデータがあっても、それが何を示し、どの情報と結びつき、どこを確認すれば判断できるのかが見えにくい状態だったのだと思います。情報は存在していても、背景や経緯、判断の手がかりまで共有できていなければ、業務全体を理解することは難しくなります。
引き継ぎを進める中で、手順書だけでは伝えきれない部分が想像以上に多いことに気づきました。そこで、引き継ぎを作業の説明で終わらせるのではなく、業務の背景や経緯、判断のよりどころを整理し直す必要があると感じました。
課題:情報を「置く」だけでなく、「たどれる」状態にする
課題は、後任者が自分で情報を確認し、判断まで進められる状態をつくることにありました。情報は共有されていても、どこを見て、何を確認し、どう判断するのかが整理されていなければ、実際の業務にはつながりません。具体的には、次の3点を整理する必要がありました。
- 必要な情報の所在を整理すること
- 確認する順序を明確にすること
- 判断の根拠や考え方を共有すること
私の業務では、まず契約書や過去の変更依頼、計算設定ファイルなど、必要な情報の所在を整理することでした。次に、荷主から変更依頼があった際に、契約条件、過去の設定内容、システム設定の順に確認するなど、業務を進める手順を明確にする必要がありました。さらに、対応を判断する際には、何を根拠にし、どのような考え方で判断しているのかを共有することも重要でした。
改善:情報を整え、対話で理解を深める
これまで記憶に頼っていた情報を改めて整理し、契約書や過去の変更依頼、計算設定ファイルなどを後任者が確認しやすい形で共有しました。あわせて、どの順番で確認すればよいのか、迷ったときに使うツールや相談する相手も伝え、後任者が必要な情報をたどりながら自分で業務を進められるようにしました。ただし、文書化には限界があります。特に、判断の背景や細かなニュアンスは、資料を読んだだけでは伝わりにくいものです。そのため、対話を重ねながら、過去の経緯や確認すべきポイント、判断の理由を補足しました。
後任者が疑問点を細かく質問してくれたことで、こちらも理解度を確認しながら説明を進めることができました。その積み重ねの中で、後任者が「少しずつ業務の流れがつかめてきた」と話してくれたことがあります。情報の所在や手順が見え、さらに判断の背景がつながったことで、業務全体を段階的に理解できるようになったのだと思います。
また、周囲が引き継ぎの難しさを理解し、異動後も比較的長めのサポート期間を設けてくれたことも大きな支えでした。引き継ぎには資料だけでなく、対話と時間の余裕が欠かせないと実感しました。
終わりに:引き継ぎを振り返って改めて感じたこと
引き継ぎを通じて改めて感じたのは、自分にとって当たり前になっている確認の流れや判断の考え方ほど、意識して伝えなければ相手には伝わらないということです。今回の異動には不安もありましたが、自身の業務を見直し、情報の所在や確認の順序、判断の根拠を明確にし、後任者が業務をたどれる形に整えられたことで、大きな安心につながりました。担当者が替わっても業務が滞らないようにするには、日頃から情報の所在や判断の根拠を整理し、誰でも業務を追える状態にしておくことが大切です。皆さまの職場でも、まずは今ある情報の整理から始めてみてはいかがでしょうか。
(文責:松本)
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