標準貨物自動車運送約款とは

新たな環境で出会った人と話す場合、いままで「当り前」に共有出来ていたやり取りが通じないことがあります。プライベートでの会話においては、誤解が生じてもコミュニケーションを続ける中で徐々に回避され大きな問題にはならないでしょう。しかし、企業間では信頼損失や利益損失に繋がりかねません。

ビジネス上では、このような「当り前」によるトラブルを回避するために、契約を取り交わす意味があると考えられます。先日、その契約の一部となる約款、その中でも標準貨物自動車運送約款について調べる機会がありましたので、ばんばん通信をご覧の皆様にはご存知の方も多いと思われますが、おさらいの意味も込めて(私の勉強の意味も込めて)整理したいと思います。

そもそも約款とは、広辞苑では「法令・条約・契約などに定められた一々の条項」と定義されています。また、ロジスティクス・オペレーション3級では、「運送事業・保険事業・旅行事業など不特定多数の利用者を相手とする事業において、委託する側と受託する側の契約内容を、社会通念上妥協と考えられる考え方(一般公衆の公共的な事業の利用関係を規律するため)で、あらかじめ定型的に詳しく定めたもの」と定義されています。
つまり、仕事を受ける側の責任の範囲や、損害が生じた場合の補償の条件等を明示したものになります。

約款の中で、運送においては運送約款があり、国土交通省が公示したものが標準運送約款になります。
標準運送約款には下記6種類あり、今回は一般貨物自動車を対象とする標準貨物自動車運送約款を記載します。

 

標準貨物自動車運送約款は、下記のような構成になっております。

標準貨物自動車運送約款の中では、具体的に2つ「第12条(外装表示)」と「第38条の2(車両留置料)」を取り上げ、ご紹介します。

第2節 引き受け
(外装表示)
第12条 荷送人は、貨物の外装に次の事項を見やすいように表示しなければなりません。ただし、当店が必要がないと認めた事項については、この限りでありません。

1 荷送人及び荷受人の氏名又は商号及び住所
2 品名
3 個数
4 その他運送の取扱いに必要な事項

2 荷送人は、当店が認めたときは、前項各号に掲げる事項を記載した荷札をもって前項の外装表示に代えることができます。

第7節 運賃および料金
(車両留置料)
第33条の2 当店は、車両が貨物の発地又は着地に到着後、荷送人又は荷受人の責により留置された時間(貨物の積込み又は取卸しの時間を含む。)に応じて、当店が別に定める車両留置料を収受します。

 

貨物自動車を使用する運送事業者側は、貨物自動車運送約款を定め、文書化し、利用者に明示する義務があります。
また、全ての貨物自動車を使用する運送事業者は、あらかじめ貨物自動車運送約款を国土交通省に提出し、許可を受けなければなりません。ただし、前段で説明しました標準貨物自動車運送約款をそのまま使用する場合は、その旨を届ければ許可を受けたものとみなされます。そのため、多くの物流事業者が標準貨物自動車運送約款を利用しています。
一方で、標準貨物自動車運送約款と異なる約款を定めている企業もあります。その場合、異なる箇所に相手の意図が盛り込まれていることも考えられます。
私見ではありますが、新たに契約を締結する場合に、相違点をまとめて説明しても良いのかもしれません。

また、取引をしている物流事業者の運送約款を取り寄せて、標準貨物自動車運送約款を使用しているか、独自のものを定めているか、一度内容を確認してみてはいかがでしょうか。新たな発見があるかもしれません。

(文責:星 絵里華)

【参照】
国土交通省 標準貨物自動車運送約款
https://www.mlit.go.jp/common/001280957.pdf
中央職業能力開発協会ビジネス・キャリア検定
ロジスティクス・オペレーション3級
(ビジネス・キャリア検定試験 標準テキスト)
https://www.javada.or.jp/jigyou/gino/business/gakusyu.html

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第296号 2015年9月30日)

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