物流業における最適な環境対応車の選択(前編)

第1章 はじめに

今日、運輸部門における二酸化炭素の排出量は日本全体の排出量の約20%に相当しており、物流事業者における二酸化炭素の排出量の抑制は重要な課題の1つです。また、物流事業者にとってはCSR(企業の社会的責任)を強化しながら、コスト抑制、燃費、積載率等の向上も無視できません。そこで今回は、昨今の環境対応車事情について触れてみます。

ディーゼル車から排出される粒子状物質PMについては発がん性などにより健康被害が懸念されたことから、2001年6月にこれまでの自動車NOx窒素酸化物)法を改正した、2001年6月に自動車NOx・PM法(正式名称:自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法)が成立し、2002年から施行されました。

同法には一定の自動車に関して窒素酸化物や粒子状物質の排出がより少ない自動車を使うように「車種規制」が盛り込まれています。この規制によって、大都市圏(首都圏、近畿圏、愛知県、三重県)で使用できる自動車は制限されることになりました。また、2003年10月以降、排気ガス基準に適合できない自動車は対象地域内での車検の更新ができなくなりました。さらに首都圏、大阪府、兵庫県では自治体のディーゼル規制の条例を協調して定めました。この結果、DPF装着(排気ガスに含まれる粒子状物質を減少させる装置)等の条件を満たさない自動車の規制地域内の通行自体が禁止されました。 (表1・表2参照)

自動車排出ガス規制の経緯(ディーゼル重量車) (表1)

(表2)

※国土交通省より https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/09/090325/02.pdf

また、2005年に発行された京都議定書では、わが国は2008年から2012年までの間(約束期間)に1990年比で平均6%の温室効果ガスを削減することを目標としています。その背景を受け、翌2006年4月には省エネルギー法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)も改正され、荷主企業と物流事業者の連携により、モーダルシフトを強化し、CO2の排出量を抑えていくことが大きな取り組みとしてあげられています。

自動車メーカーも対応技術の研究開発に積極的に取り組んでいます。ユーザーの環境意識の高まりから、トヨタではハイブリッド車「プリウス」が新車乗用車販売台数で、3か月連続1位を記録し(社団法人 日本自動車販売協会連合会調べ)、またホンダでは軽量でシンプルなハイブリッドシステムを搭載した「インサイト」が高い評価を得ており、世界規模の自動車市場の冷え込みに反して、ハイブリッド車市場は活発です。

環境対策の取り組みについて、国、企業、各自治体等が積極的に継続してきたことにより、わが国の排出ガス規制は世界でもトップレベルの厳しい水準に達しています。(表1・表2・表3参照)

次章では現状の環境対応車をご紹介します。

(表3)
ポスト新長期ディーゼル重量車の排出ガス規制達成値、目標値の比較
(2009~2010年)


※日本自動車工業会 資料より

第2章   環境対応車概要 

性能

ポスト新長期対応ディーゼル車について

2009年10月に、現在の新長期規制に比べて一段と厳しい水準の『ポスト新長期排出ガス規制』が導入されます。重量車(車両総重量3.5トン超)の場合、NOXの排出量が新長期規制の65%減、PMについては同63%減となります。1章でも述べたように、これまでのメーカーの開発努力によるNOx・PMの削減効果は素晴らしいものであり、私たちの想像以上にクリーンな車となっています。

ポスト新長期規制は一層高い数値レベルとなっており、メーカーではその目標に対し、尿素を使用しPMを抑えるという技術や、化学反応を利用して無害な物質に転換する触媒よってNOxを取り除く新型エンジンの研究開発などに取り組んでいるようです。

また、ハイブリッド車やCNG(Compressed Natural Gas)車と比べ、トラックの車種・型が豊富なことが大きな特徴といえます。

ハイブリッド車について

ハイブリッド車は補助動力としてモーターを搭載し、発進・加速時に電池からの電気供給を受け、エンジンをアシストするという特徴をもっています。

メーカーによっては、モーターの力のみで発進するものもあります。減速時にはモーターが発電機に切り替わり、車の運動エネルギーを電気に変換し、専用バッテリーへの充電を行います。

しかし、渋滞時の低速域のブレーキ操作では十分な充電ができないため、燃費が向上しない場合もありあます。これは車種選択時のポイントの1つになるかと思います。また、車両重量が増えるにつれモーターが大きくなり、それに伴い積載量が減少してしまうというデメリットもあります。購入価格はディーゼル車に比べ、2トン車で約100万円アップ、4トン車で約300万円アップしますが、アップ分の約75%は国や地方自治体から補助金として支給されるため、2トン車で約25万円、4トン車で約75万円がユーザーの実質負担増となります。

CNG(Compressed Natural Gas)車について

CNG車は圧縮天然ガスを燃料とし、排気ガス中の有害物質(黒煙・NOx・SOx等)が非常に少ないということが最大の特徴であり、環境性能に優れています。ディーゼル車と比較した場合、CO2排出量17%低減、NOx排出量70~90%低減、硫黄酸化物(SOx)と黒煙(PM)については排出せず、更に低騒音を実現しています。

都市部を中心に、塵芥車やバス等への適用が広がっていますが、ハイブリッド車と同様、購入価格が高い、メンテナンス費用がかかる、積載量が落ちるといったデメリットを抱えています。それに加え、CNG車には2つの課題があります。その1つは、CNGスタンドが整備されていないことです。現在のガソリン(軽油)スタンド数に対し、CNGスタンドは非常に少ない状況です。

2つ目は燃費が良くないという点です。ディーゼル車に対して平均で約10%減の燃費になるといわれています。


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