物流分析手法シリーズ12【物流拠点戦略】

はじめに

最近、生産拠点の再編、物流拠点の再編のニュースが新聞を賑わせています。
各社は、拠点立地の見直しを進めることで効率化に取り組み、コストの削減を考えているように思われます。
前回の物流分析手法シリーズ11【物流センター設計編】では物流センター設計の全体の計画を解説しました。今回の物流分析手法シリーズでは物流センターをどこに設定するかということにスポットを当て、物流拠点の再編を行う上での戦略について寄稿し、物流拠点の再編に係わる分析手法、また事例を使って考え方のポイントを紹介致します。

分析手法の説明

前回の物流分析手法シリーズ11【物流センター設計編】で紹介しましたとおり、物流センター設計はまず、物流センターのコンセプトを決定後、最初の実行ステップとして、最適物流拠点の設定を行うことになります。

物流拠点の設定は(1)立地場所を設定する、続いて(2)拠点立地数を判断するという手順で進めていきます。

立地場所を設定する

まず、『(1)の立地場所を設定する』について、一般的に需要地近隣に立地を選定したほうが望ましく、その判断手法の一つとして重心法があります。
重心法とは輸送ネットワークにおける候補拠点のなかで、物量(t)×配送距離(km)の合計(Σ総トンキロ)が最小となる立地地点(配送エリアの物流重心という)を選定することで、配送コストが最小化するという考え方です。
ここで、配送路4拠点(A,B,C,D)の中から最適拠点を設定するイメージを表1に記載します。

表1.重心法による最適拠点の設定

まず、Aに配送拠点を設置した場合の配送トンキロを計算すると

Aからの配送距離  Aからの物量(トンキロ)
A → A= 0km  Aへのトンキロ=  0×  6=  0
A → B= 5km  Bへのトンキロ=  5×  5= 25
A → C= 10km  Cへのトンキロ= 10× 11=110
A → D= 15km  Dへのトンキロ= 15×  6= 90
A~D 合計 225トンキロ

となり、同様の計算をB,C,Dについてもすると

Aに配送拠点を設置した場合 225トンキロ
Bに配送拠点を設置した場合 145トンキロ(最小コスト⇒最適拠点)
Cに配送拠点を設置した場合 163トンキロ
Dに配送拠点を設置した場合 283トンキロ

であり、トンキロの一番小さいB拠点が最小コストとなり、B拠点が最適拠点と判断できます。

拠点立地数を判断する

次に『(2)拠点立地数を判断する』について、判断基準として「顧客への配送サービス率(納品リードタイム)」「合計物流コスト」を考慮する必要があります。

それを図表化したイメージが表2になります。

表2.物流サービスと物流費用の傾向イメージ

顧客への物流サービスを示す「配送サービス率」は、拠点数が増加するにつれて、右肩上がりの波形となっています。

「合計物流コスト」については、拠点数少→拠点数多に変化するにつれてU字型を示しております。これは、拠点数が増加するにつれて「配送コスト」が安くなる一方で、「在庫保有コスト」「入出庫コスト」「輸送コスト」が増加することになり、これらは互いに合い反(相反する)トレードオフの関係になっています。

まとめ

それぞれのコストについてまとめると、

<配送コスト>
▼一般的に、拠点数が増加するにつれて、拠点から配送先の距離が短くなり、配送コストは減少します。
▼また、納品リードタイムが短くなり、「配送サービス率」が向上します。

<在庫保有コスト>
▼拠点数が増加すると拠点毎の安全在庫が増加し、結果として各拠点の合計在庫量が増加し、在庫スペースコストが増加します。
∵拠点毎の安全在庫が増加する理由としては、「任意のレベルのサービスを確保するのに必要な安全在庫量は、場所(拠点)の数の平方根に比例して変化する。」というもので、次の式で表されます。
<拠点分散時(1拠点→n拠点)> n拠点での安全在庫量 = √n × 1拠点での安全在庫量
※拠点数と在庫の関係についてはロジ・ソリコンサルタントが物申す NO,9号『拠点集約・分散時における在庫変動について』をご参照下さい。
▼在庫維持コストとして、増加した在庫分の保管料が増加します。
▼また、増加した在庫分の金利が増加します。

<入出庫コスト>
▼入出庫コストは拠点数が増加するにつれて、増加した在庫分の入庫作業が増えるため、作業にかかる人件費コストが増加します。

<輸送コスト>
▼輸送コストは拠点数が増加するにつれて、輸送元から拠点までの供給ルートが増え、車両効率が低下する事によりコストが増加する可能性があります。
▼また、増加した在庫分の輸送量が増えるため、コストが増加します。

よって、物流拠点数は顧客が満足する物流サービスが提供できる範囲内で、配送コストと在庫保有コスト、入出庫コスト、輸送コストの合計コストが最小になる拠点数が最適物流拠点数となります。

ロジ・ソリューション株式会社は、センコー株式会社のコンサルタントチームとして豊富な経験と実績を蓄積し、物流分析のノウハウを持っております。

今回ご紹介しました重心法を活用した物流拠点の最適化は表計算ソフトを利用しますが、拠点立地のシミュレーションソフトを使った物流拠点戦略コンサルティングも行っております。
検討初期の現状把握から計画実行まで内容やレベルに合わせた物流拠点戦略コンサルティングや、その他様々な手法を使った物流コンサルティングを進めております。物流現場改善など、お気軽に弊社にご相談ください。

(文責:河本)

【参考文献】
中央職業能力開発協会著
「ビジネス・キャリア検定試験標準テキストロジスティクス管理3級」
中央職業能力開発協会著
「ビジネス・キャリア検定試験標準テキストロジスティクス管理2級」
白桃書房 日通総合研究所編
「最新 物流ハンドブック」

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