物流分析手法シリーズ06【物流品質編】5Sの進め方

はじめに

5Sは企業にとって、いつの時代でも大変重要な道具です。企業によっては、これに「作法」や「しっかり」を追加して、6Sや7Sとして取り組んでいる場合もありますが、昨今の非正規雇用労働者や外国人労働者の増加等による現場労働者の変化、中国や東南アジアを中心とした海外への生産拠点のシフト等により、この5Sが最近再び注目されています。

今回は、物流分析手法シリーズ第6弾として、簡単ではありますが、改めて「5Sの進め方」についてご紹介したいと思います。

5Sのねらい

5Sとは一体何なのでしょうか。5S=「整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)」だということは皆さんご存じだと思いますが、何故5Sが重要なのか、そのねらいはお分かりでしょうか。一般的に5Sの狙いとして以下の5つが挙げられます。

人を育てる

5Sの最大のねらいは「人材育成」です。ルールを作り、そのルールを皆で守る・守らせることを徹底することにより、個々の行動に責任を持つようになり、管理者と作業者の両方の人材育成に繋がります。

快適な職場を作る

不要なモノが無く、汚れのないキレイな職場はとても快適です。物理的にも精神的にも大変風通しのよい職場となります。

顧客満足を得る

5Sが確立されている現場からは、品質の良い製品がお客様の納期通りに確実に出荷されます。また見学に来られたお客様も現場をみて安心されます。

仕事の効率化を図る

整頓がキチンと出来ていると、モノを探すことが殆どなくなります。作業台の上も整然としており、不要なモノがないので作業効率も自然によくなります。

見える化を促進する

不要なモノがなくなると、保管スペースが減り、棚も肩の高さ以下にすることができます。すると現場が一目で見渡せるようになり、異常が直ぐに分かり課題の解決も早くなります。

5Sの進め方

次に、5Sの進め方についてですが、大きく7ステップで取り組んでいきます。

ステップ1:導入準備

5Sを取り組み始める前に、きちんとした計画・準備を行うことが重要です。

1)5Sのねらいと、組織として目指す姿を明確にする。
2)推進体制(特にリーダー)を設定する。
3)推進方法(対象場所)を設定する。(全社一斉導入、特定場所のみへの導入、時期をずらしての順次導入 等)
4)推進計画(ステップ毎の具体的スケジュール)を設定する。
5) 評価方法を設定する。
6)現場作業者へのキックオフ説明会を行う。(特にねらいと目指す姿の周知)

ステップ2:整理

5Sにおける「整理」とは、「必要なモノと不要なモノを分ける」ことを意味します。ここで大事なことは、不要と判断されたモノを捨てる勇気を持つことです。もったいない、いつか使うだろうと思っていつまでも捨てずにいると、余分な場所や容器が必要となり、新たな仕事が発生してしまいます。心を鬼にして捨てることが大切です。

また必要と判断されたモノも、使う頻度によって分けます。そのモノは毎日使うのか、1週間に1回なのか、1ヶ月に1回なのか明確にし区分することが必要です。

ステップ3:整頓

5Sにおける「整頓」とは、「必要な時に直ぐに取り出せるようにする(元の位置に戻せるようにする」ことを意味します。ここで大事なことは、必要になる頻度によって置き場所を分け、そしてどこに何が置いてあるのか、誰が見ても分かるようにすることです。折角整頓をしてもよく使うものが手の届きにくい高い場所に置いてあったり、そのモノの置き場所が自分以外の誰も分からなかったのでは意味がありません。必要なモノは取りやすい場所へ置き、置いたら表示物を付ける必要があります。

ステップ4:清掃

5Sにおいて「清掃とは点検なり」とよくいいます。つまり清掃とは単にキレイに掃除することではなく、自分達の使っているモノのメンテナンスを忘れずに、最高の状態を維持することなのです。また、ここでいう点検とはモノだけでなく、整理整頓の徹底度合いを点検(チェック)するということも指します。少しでも5Sが出来ていない箇所を発見するとすぐに周りに伝え、組織全体で改善していくことがとても重要です。5S不具合箇所の発見に当っては、チェックシートを活用することも有効な方法の一つです。

ステップ5:清潔

「清潔」とは3S(整理・整頓・清掃)が維持されている状態のことをいいます。清掃と似ている部分もありますが、清潔は3Sの上にあるもので、3Sが出来ていないと清潔へは進めません。つまり「3Sがキチンと出来ている=清潔が出来ている」ということになります。清潔を保つ方法を考えるに当たって大事なことは、3Sが正常な状態とはどういう状態なのか、どうなったら異常なのかを、目で見て直ぐに分かるように工夫・徹底することです。

例えば母親が子供に玄関で靴を脱いだらキチンと揃えなさいといくら言っても守らなかったのが、玄関に足跡のマークを描いたら面白がって揃え出し、お客の靴まで揃えるようになったという話があります。つまり異常や悪いことは何だったのか、言葉だけでは子供には分らなかったのです。

それが靴跡マークを描いただけで、何をどうしなければならないのか、管理の仕方が分かったのです。このように守るためには、守りやすい道具などの工夫をすることが大切です。

ステップ6:躾(しつけ)

5Sにおいて、最も重要なのが「躾」です。そして最も難しいのも「躾」です。躾とは「決めたことが自然と守れるようになるところまで習慣づけることであり、習慣を変える」ことなのですが、人間は三日坊主という言葉あるように、怠け癖やあるいは口約束だけで見て見ぬ振りをするとか、形だけ作るというような怠惰な特性を潜在的に持っています。「躾」を徹底させるには、根気強く地道に取り組んでいく他ありません。

ステップ7:診断(評価)

5Sのような活動は、自分たちだけでやっているとマンネリ化し、中々強い力が湧いてきません。しかも実際は忙しい中で行うのですから、何らかの方法でその進度やレベルを掴み、評価をしていかないと全員の足並みが中々揃いません。何とか皆が楽しみながら競争できるやり方を作ることが大切です。

それには、診断(評価)の仕組みをどう作るかということになります。

診断は、自分で行う自己診断と、第三者の権威者(認定員)による場合がありますが、いずれにしても目指すべき姿と診断基準を一致させてから行う必要があります。

次に、5Sを維持・定着させるための取り組み例として、対抗戦方式も有効な方法の1つです。3人~5人を1チームとして5S活動チームを作り、得点方式で競わせ、優秀チームへは何らかの報酬(アメ)を与えます。この方法により、一人ひとりに責任感と意欲が芽生え、組織内でもよりよい方向へ改善していこうという、5Sの継続展開へ繋げることが出来ます。

(文責:LS5/福田)

【参考文献】
長田 貴著
「手づくりマネジメント手法 5S」:社団法人 日本プラントメンテナンス協会(1989)
越前行夫著
「図解でわかる 生産の実務 5Sのすすめ方」:日本能率協会マネジメントセンター(2007)

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