VMI(ベンダー管理在庫)と日本の百貨店商習慣について:後編

アメリカでは「完全買い取り」が主流

前編では日本のアパレル業界独特の商習慣である『委託販売』『消化仕入』『返品条件付き買い取り』についてみていきました。

これに対して、米国におけるメーカーと小売り間の取引き形態は『完全買い取り』が主流で、製品の発注権、販売価格の決定権、在庫所有権は小売り側にあるそうです。

米国は1980年代半ばに、ドル高でアジア製の廉価な輸入アパレルが急増した事で、アパレル業界が大打撃を受け、個別企業での取り組みでは対応できず、業界全体で競争力を高める動きが起こりました。

これはアパレル業界だけでなく小売業も協力し、メーカーと小売りが互いの情報を共有し、生産から店頭までのリードタイムを短縮する事により、過剰在庫の削減や店舗での欠品による販売機会ロスを軽減しようという取組みでした。この取組みはQR(クイックレスポンス)と呼ばれ、その取組の結果として様々な業務改革手法が生み出されました。

POSデータを小売りから入手したメーカーが、店頭の販売情報を基に店頭在庫を管理するVMIという方式もその一つであり、現在の米国のアパレル業界では一般的な手法として定着している様です。ちなみに、QRはアパレル産業を中心に始まりましたが、やがて他の産業にも同様の取組みが広がり、食品雑貨業界のECR、外食・宅配業界のEFR、医療業界のEHCRがそうです。

VMIとは

VMIとは、Vendor Managed Inventoryの略で、「商品の供給者が所有権を持ち在庫を管理する」と言う意味です。

一例を挙げると、自動車メーカーA社に部品を供給しているB社があり、部品の保管配送を物流企業C社に委託していとします。従来はA社がB社に部品を発注し、B社がC社に出荷指図を行いC社が部品を納品します。これがVMI方式だと、A社が物流企業のC社に出荷指図を行いC社が納品する形となります。大きな変更点は、C社に保管されているB社の部品を使用者であるA社の指示により出荷する事です。この方式によりA社が部品を注文してから納品までのリードタイムが短縮され、流通在庫の圧縮に繋がります。この事からVMIはSCMのリードタイムの短縮を行う手段の一つではないでしょうか。

前編で述べました百貨店とアパレル業界の特殊な商習慣はそれ自体が問題ではありません。実は、昔から日本の百貨店ではVMIに近いしくみが運用されていました。そのしくみはメーカーから派遣されて百貨店に来ている店員が店頭の単品の売上実績や在庫実績を手作業で集計し、メーカー本部に報告というものでした。

一方、日本のQR及びアパレル業界のVMIの取組は、米国のそれより約10年遅れて95年頃からスタートしました。基本は米国を手本に進めてきましたが、米国はメーカーと小売りの直取引が前提なのに対し、日本では、特約店をはじめとする卸が介在するなどのVMI阻害要因が多いと言われています。その中で、日本のアパレル業界で進んでいるVMI方式はコンビニエンスストア同様にPOSデータの共有が特徴となっています。

そのコンビニエンスストアのVMI方式は、商品バーコードをPOSレジで読み取ることにより、何時、何が、何個売れたかという情報がメーカーや卸に自動で流れ、その情報に基づき各店舗へ商品が配送され、店舗は発注しなくても商品が補充される仕組みとなっています。

業界を問わず海外の調達先を含めたSCMの再構築が注目されており、ロジ・ソリューションもその取組を支援していきたいと考えております。

(文責:仲才)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第161号 2012年2月22日)