10【物流センター設計編(前編)】

1.はじめに

 前回寄稿させていただいてから約1年振りの物流分析手法シリーズです。第10回目は、物流センター設計についてご紹介させて頂きます。

 先般の東日本大震災を受けて、最近はリスクヘッジを目的とした物流ネットワークの再構築を行う企業が散見されますが、それ以外にも、効率化を目的とした物流拠点の統廃合や、既存センターの老朽化による建て直し、またM&A等による企業規模拡大に伴う新センターの設置等、様々な理由で物流センターを設計する場合があります。

 「物流センター設計」とは、倉庫建屋・荷役保管設備等の有形物に限らず、輸配送インフラとの連携・情報のやりとり、時間の経過に対する人や物の流れ等も含んだ物流センターの諸機能の全てを設計しなければなりません。ゆえに物流部門責任者、あるいは実行担当者が設計段階で考慮すべき事項は非常に多岐にわたります。

 今回は「第10回 前編」として、物流センター設計手順のうち、コンセプトの設定から立地検討、基礎分析までをご紹介します。そして次回は「中編」として、センターのレイアウトとオペレーションの計画方法について、次々回は「後編」として物流センター設計の事例を紹介していく3部構成となっています。
 それでは、前編を以下の章で説明していきたいと思います。

2.物流センター設計について

 物流センター設計の手順はいろいろありますが、基本的な流れは次のようなものです。

(1)コンセプト・目的・目標の明確化

 まず物流センターをどのようなセンターに構築するかがポイントとなります。そのためには、センターのコンセプト・目的・目標を指標として明確にする必要があります。

(2)拠点の立地検討

 拠点立地を検討します。顧客のニーズ・地理・道路環境・拡張性・輸送体制等、様々な条件を検討する必要があります。

(3)基礎分析

 顧客のオーダー、扱う製品の種類・数量・流れ・施設や設備のインフラ・リードタイムや頻度、その他関連事項を分析して定量的な指標として捉え、対象とする業務を分析して全体像を捉えます。

(4)レイアウトプランニング

 検討した分析結果に沿って、どのようなレイアウトが最適かシミュレーションする必要があります。

(5)オペレーションプランニング

 実際のセンターが稼働した場合を想定し、時間に対する人と物の動き・設備や資材・情報の連携等を設計します。
では次の章より順を追って説明していきましょう。

(1)コンセプト・目的・目標の明確化

 まず、物流センター計画を立ち上げた動機は何か、コンセプトを明確にします。一般的に計画の動機づけは次のような事項があります。

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 基本的にはこのような動機がもととなって、計画のコンセプトとなり、目的が纏まります。次にどのような物流センターを計画するのか、できる限り具体的に示す必要があります。動機となった事項を満足させ、且つ理想とする機能を付加した物流センター像を明確にし、定量的な目標値も設定します。
  

(2)拠点の立地検討

(ア) 基本条件の整理

 新たな物流センターの目的や方針を再度整理・確認するとともに、以下の条件をはっきりさせることによって、立地可能な範囲を絞り込むことができます。
 

1)需要条件

現在および将来予想される顧客分布の状況・取扱量の増加率・配送エリアの範囲。

2)輸送条件

鉄道貨物駅・港湾施設・空港施設・高速道路IC・公共トラックターミナル等の輪送拠点と近接させる必要性の有無。

3)配送サービス条件

顧客の受取時間が指定されているか。配送頻度や配送時間から許容される顧客~物流センター間の距離はどの範囲か。

4)用地条件

現有の施設や用地を利用するのか、それとも用地を新たに取得して建設するのか。用地を取得する合、地価はどの程度までか、地価許容範囲内にある用地の分布状況はどうか。

5)法規制

用途地域から建設できる地域はどこか。

6)管理・情報機能条件

本社・営業・管理・情報部門などと近接している必要があるか。

7)流通機能条件

商流と物流の機能を分離させるのか。流通加工機能も付加させるのか。

8)その他

業種によっては、冷凍保温施設や公害防止施設、危険品取扱関連施設など、特珠な事情から立地場所が限られる場合がある。それらに適した地域があるか。

 条件によっては施設規模や立地が決まらなければ結論を出せないものもありますが、各希望条件に優先順位をつけた上で、検討を重ねて立地すべき場所の範囲や候補地を限定していきます。
 都市過密化が急速に進展した日本では、候補地を自由に選択することは困難で、現実には、煩雑な計算手法によるまでもなく、前提条件や分析結果に近似した現実的に取得可能な立地・物件で決まってしまう場合も少なくありません。

(3)基礎分析

 目的・目標が明確になり、拠点立地候補も見えてきたところで、その計画に必要となる基本的な分析を行う必要があります。

 物流センター計画の基本分析のひとつとして5種類の分析方法があります。

  (ア) 保管対象物の分析 … Product分析
  (イ) 物量の分析 … Quantity分析
  (ウ) 経路の分析 … Route分析
  (エ) 物流インフラ条件の分析 … Service分析
  (オ) 時間の分析 … Time分析

 これらの分析により基本的な骨組みを固める事ができ、特性・規模・機能等が具体性を持った数値として表れてきます。反面、基本となる分析がぶれてしまうと以降の設計が間違ったものになってしまう可能性があるため、正確性を重視しながら進める必要があります。

(ア)Product分析

 Product(製品)分析は製品別,質量別,形態別に保管対象製品を区分して、その特性を見極めます。

1)製品別分析

荷姿,重量,温度帯,比重,危険物,粉体/液体などの区分をして、対象となる製品の特徴を把握します。

2)質量別分析

保管対象物の質量で区分する場合、一般的には超軽量の小物/小物/1,000kgまでの重量品/1,000kg超の超重量品等の大きな区分で考えます。また、製品の特性や作業性,サービスレベル等に応じ、その区分を更に細かくしていく事もあります。

3)形態別分析

一般的には定型製品/異型製品に区分します。定型製品には、長尺物,丸物などもあります。異型製品は、基本的にハンドリングがしにくい製品です。例として、ゴルフバッグ,配管ダクト製品,大型家具等です。

この様に、あらゆる面から対象となる製品特性を見極めて、倉庫建屋構造・荷役保管設備から作業や輸配送の設計を行う際の条件付けを行います。

(イ)Quantity分析

 Quantity(物量)分析は物流センター計画数値の基本となります。
どのようなものがどれだけ保管されるのか、どの工程をどれだけ流れるのか、物流センターの大きさや物流センターを取り巻く外部条件(輸送容量等)を決定するための基礎となる分析です。分析方法は必要とする機能や能力水準によって異なり、外部条件に適応しなければならない等、多種におよびますが、代表的な分析方法を紹介します。

1)機能別物量分析

物流センター内の各機能毎の物量を把握するもの。各機能とは、入荷・保管・流通加工・荷役・出荷などを言います。また、物量とは数量だけでなく、品種,容積,件数(頻度),仕向先(納品先)等の要素があるので、必要とされる機能に対応した物量を把握する必要があります。

2)ABC分析

品目と出荷量の関係を分析し、クラス分けしてクラスの重要度別に管理レベルを変更することで作業効率を向上させようとするものです。

3)時系列物量分析

現状の月々・日々・時間の荷動きの波動を調査し、時系列での物量とピークの原因を追求し把握します。その分析より、できるだけ平準化を図るとともに、ピーク時に対応できるようセンターの設備能力・投入人員等の設定条件を検討します。

4)荷姿データ分析

保管対象物単体の荷姿データと、保管形態にした場合の保管容器での荷姿データを把握します。単体の特性は同じでも、保管物量や荷動きの単位が違うと保管・荷役だけでなく、輸配送の扱いも異なる為です。
  

(ウ)Route分析

 Route(経路)の分析は、物流センター庫内作業における入荷から出荷までの物流工程を表現し、工程間のフローを示す分析の事を言います。こうする事で、視覚的に物流行程を把握でき、整合性の取れた効率的な物流センターの作業工程を組み立てる元となります。一般的な物流センターの物流行程と工程間のフローを示すと以下の様になります。

入荷→検品→入庫→保管→出庫→検品→梱包→出荷

 この流れは簡単に表現していますが、例えば保管では補充入庫やはい替え、出庫では袋詰め、値札付け等の流通加工工程などがあったりして複雑です。
そこで、実態に合わせた物流フローと物流量を誰にでも分かるように図示しておく事が重要です。

(エ)Service分析

 Service(物流インフラ条件)の分析とは、施設や設備などのインフラのサービスレベルによって、物流が変化する要因の事を言います。物流では、広く物流インフラ条件の分析を行う場合には港湾施設・空港・駅・道路などの公共施設・トラック業者等の各種輸送機関・営業倉・トラックなどの質量制限など条件に関する分析を行う必要があります。
  

(オ)Time分析

 Time(時間)の分析には、取引先や納入先の条件の分析があります。特に、企業間の取引におけるリードタイムや納入頻度などのサービスレベルが大きく影響してきます。この物流サービスレベルを上げる事で他社との競争優位・差別化を確保する事が出来ますが、実運用とコストとのバランスが重要です。物流サービスレベルを計る主な項目として、品揃え・欠品率・納品リードタイム・定時間指定・納品形態・誤納品率・納品場所・空容器回収・鮮度管理等があります。
 
 この様な5つの基本的な分析に加えて、個別の特性やイレギュラー事項・製造・販売計画等も含めた詳細の分析を必要に応じて行います。こうして、物流センターのコンセプトから段階的にブレイクダウンした詳細の事象について論理的分析を行って、物流センター設計を高効率なモノにしていきます。