物流事業者が新規ビジネスに進出するにあたり(3)

前号まではマーケティングの必要性について述べましたが、新規ビジネスを進める上では人材の確保も重要な要素になります。

■人材の流動性について
サービス提供地域を広げることや、取扱い物量の増加にともなってアセットを拡充することは事業の拡大には必要です。その事業展開がマーケティング戦略に沿った新サービスであれば、その道のスペシャリストを中途採用し、優秀な人材の確保が必要となります。
一方事業を展開する上の懸念事項として、「自社の人材不足」を挙げる物流企業が多く見られます。そもそも物流業界は人材の入れ替わりが少なく「流動性に乏しい」ことや、「中途採用の制度が整備されていない」などの環境面での問題もあります。
新サービスに踏み出す場合にはスペシャリストを採用し、市場のスピードに合わせて事業化することが必要です。自社の人事制度を見直して組織の硬直化を防ぎ、中途採用者向けに社内マニュアルを整備するなど、優秀な人材を確保する方向に向かわなければなりません。
なぜ物流業界は人材の流動性に乏しいのかを考察してみます。
物流事業者は荷主からの要望がきっかけとなり行動を起こすことが多く、荷主企業の業績によって売上が左右される傾向にあります。荷主企業の業績悪化が物流事業者の売上低下に直結しており、物流事業者は受動的な思考カルチャーであるため、従業員自身も受身になりがちで、所属企業への依存度も高くなります。「転職して他流試合を行う」という思考には至らず、「社内でしか通用しない論理や慣習」が発生します。
つまり物流事業者の従業員は社外の環境では通用しづらくなっているという事です。これが人材の流動性が乏しい原因の一つであるといえるでしょう。

■給与体系の整備
物流事業者が従業員に支払う給与は、一般的に他業種より低い傾向にあり、特にそれ自体には問題はありませんが、先ほども述べた通り景気が悪くなって物量が少なくなると物流事業者の経営は厳しくなり、経営を維持するために従業員の給与を下げることがあります。
給与金額に弾力性を持たせることは社員の働く意欲・モチベーションにも影響します。一連托生の世界なので、社員は嫌々ながらも処遇低下を受け入れますが、このような状況が続くと優秀な人材(他流試合のできる人材)が他社に流れてしまう危険性があります。
「EC物流などの新サービスを提供するためには、EC物流経験者やITに精通した人材の確保や、それなりの処遇も必要です。知的労働への対価を支払う給与体系整備が必要になります。EC物流を行うにあたって、急速なEC化に対応するためには、知識とノウハウを持った人材への投資が必要なのです。

■社内教育方針
物流事業者は求められる人材像を戦略に従って教育方針を作る必要があります。現状の主たる教育は現場でのOJT(On the Job Training)ですが、長期的視点に立ってプログラムに沿った教育を社員にすることが重要です。教育期間中は短期的な収支に影響します。しかしながら新サービスを考え、育て、企業のコアに成長させるためにはそれを担う人材を育成する社内教育制度が必要になります。セールス&マーケティング担当者の育成が必要といえるでしょう。

『物流事業者が新規ビジネスに進出するにあたり』の最終号となる次号では、3PLとマーケティングの関係について述べる予定です。

(文責:釜屋)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第278号 2015年2月25日)