物流コンサルティングの現場で「伝える」を考える。3

(2はこちら)

前回は有名なことわざを引き合いに出しながら、縦の論理についてご説明しました。今回は横の論理についてご説明します。前稿の冒頭でご案内した通り、話が上手く伝わらない原因の2つめは横の論理がつながっていないことです。相手から「本当にそれだけなのでしょうか。」のような反応をされた場合は、基本的に横の論理が不足している場合がほとんどです。具体的には話した内容が全体をカバーできていない、漏れやダブりがあるということでしょうか。

なかなかイメージできない方もいると思うので、少し具体例を用いて説明したいと思います。昨今、輸送コストの上昇は数多くのメディアに取り上げられています。事実として、日本銀行による最新(2020年5月26日)の企業向けサービス価格指数で道路貨物輸送の価格指数は105.9(2015年平均=100)となっています。そういった環境下で、もし読者のみなさんが物流事業者の営業担当者だとしたら、荷主企業に料金値上げを交渉する際にどのような情報を準備すれば良いでしょうか。

人手不足による人件費高騰だけで十分でしょうか。全日本トラック協会による経営分析報告書を見ると、一般貨物運送事業における営業費用のうち人件費が占める割合は48%程度です。つまり、人手不足による人件費高騰だけでは、その他の52%がカバーできていない(漏れがある)ことになります。荷主企業担当者あるいはその上席者にあたる購買決定者に納得感のある説明をするためには、燃料油脂費や事業用自動車の価格の推移についても目を光らせる必要があります。

ここまでは輸送コストに関する具体例を用いて横の論理について説明しました。自分が知識のある物流領域の問題であれば、漏れなくダブりなく(MECE)考えることは比較的容易かもしれません。しかしながら、自社の環境分析や競争戦略の立案になると難易度が上がります。そういった場合はフレームワークを用いることで比較的容易にMECEを作ることができます。フレームワークとは、具体的にマーケティングの5Pや環境分析の3Cなどが挙げられます。ただし、フレームワークはあくまでもツールに過ぎないため、目的や状況を踏まえて活用を検討する必要があります。

横の論理に関する説明は以上です。次稿では話が伝わらない3大原因の最後の一つについてお伝えしたいと思います。

(文責:野尻 達郎)

【参考資料】
『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人,英治出版,2020年1月27日)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第437号 2020年9月2日)