戦略としてのロジスティクス

「物流」を英語で何というか? という問いに「ロジスティクス」と答える方は多いのではないでしょうか。間違いではありませんが、厳密には意味が異なります。

「物流」という言葉はアメリカのマーケティング用語の「Physical Distribution」=「物的流通」が省略されて出来た言葉です。もともと日本には物流という言葉はなく、保管や輸送などは行っていたものの、それはサービスとして認識されていませんでした。しかし、高度経済成長期を迎え、大量生産、大量販売に伴って大量輸送が必要となり、急激に地方の道路などのインフラの整備が進みます。この頃から、企業においても物流を重視するようになり、近代的な物流体制が構築され始め、サービスとして確立していきます。

一方、「ロジスティクス」とは、もともとは軍事用語で「兵站」を表す言葉として使われていました。「兵站」とは、戦争時に最先端へ物資を補給するという意味です。現在では、調達物流や製造物流など、企業の様々な物流活動の各分野それぞれを統合し、物の流れを一元管理して全体を最適化するための考え方や、そのマネジメントのことを指します。この概念が物流に取り入れられ、「物流」=「ロジスティクス」と訳されるようになったと考えられます。

第二次世界大戦では、この「兵站=(ロジスティクス)」の知見に立った戦略策定の有無が勝敗を分けました。戦争計画において、日本の「一丸、節約、全力」を謳ったスローガン的なものに対し、アメリカは「兵員、武器、弾薬、商船の必要数、いつ動員できるか」などを見積もっており、後に「ビクトリープラン」と呼ばれる壮大な戦争計画に発展します。個人的に、精神論は決して忌むべきものだけではないと認識していますが、戦略において不向きであることは事実です。自国から離れた地で相手よりも優位に立つためには、戦力や物資を継続的に戦地に補給し続けなければなりません。そのためには、グローバルな補給戦に焦点をあて、相手の補給を断つための戦力の投入場所やそれに必要な兵器や物資の調達方法、その可否、納期などを徹底的に分析する必要があったのです。このことは多くのビジネス書や物流業界紙で語られています。

現在でも企業活動の中におけるロジスティクスオペレーションは、コストとして軽視する企業はまだまだ多くあります。しかし、今、競争力強化に動く業界や企業は、需要・供給変動に対応するための戦略的ロジスティクスの整備に乗り出しており、それによる高付加価値の追及、提供で競合との差別化を図っています。したがって、ロジスティクスは企業競争においても、その勝敗を分ける大きな要素となっていますので、弱体化しないよう、十分な注意が必要だと思われます。

(文責:小谷地 俊輔)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第369号 2017年10月18日)