包装について:製品に手を加えて物流コストを下げる

はじめに

物流事業者にとって、荷主の為の効率化は収益の圧迫に繋がり積極的には行いづらいものです。また、輸送事業者のH20年度平均経常利益率は▲0.8%(H22年2月末 全ト協調査値)という惨憺たる状況です。

この様な現況下、荷主企業も単純な物流領域のみでの取り組みでは、物流コストの圧縮が困難な状態です。つまり、物流コストの圧縮を目指すのであれば、全体最適を指向し、物流領域のみならず、製造・販売領域を巻き込んだ効率化が必要です。

そこで今回は、物流コストに影響を与える1要素である「製造領域にある包装」を取り挙げたいと思います。

包装とは

まずは、周知の事実かも知れませんが、再度「包装」についてご説明させて頂きます。
包装の定義、目的 および 適正包装の定義については、

<包装の定義>

・物品の輸送・保管・取引・使用などに当って、その価値及び状態を維持するために必要な材料、容器などにどに物品を収納すること及びそれらを施す技術、又は施した状態。
これを個装、内装及び外装の3種類に大別する。パッケージングともいう。
(JIS Z 0108-2005より)

<包装の目的>

1.内容品(商品)を保護する。

1)外力からの保護(傷つき、破損、こすれ、変形)

物流過程で包装品に加わる外力

【衝撃】
・輸送車輌の荷台への積込/荷卸と段差乗り越しの衝撃
・集荷配送時の台車への積込/荷卸と段差乗り越しの衝撃
・倉庫でのはい付け、はい替え時の衝撃
・自動仕分け機による仕分け時の衝撃

【振動】

・トラック荷台振動
・台車、フォーク搬送中の振動

【荷重】

・倉庫積み付け荷重
・トラック走行中の動荷重

2)環境からの保護

【環境】温度、湿度、害虫、鼠、紫外線、気圧、静電気、微生物、すす、埃

3)対人間からの保護

【盗難】外国では予想外に多い
【異物混入】お菓子、飲料など
【小児保護】薬、シャンプー

2.取扱いしやすく、保管しやすい形に纏める

3.パッケージデザインによる販売促進・コミュニケーション

<適正包装の定義>
・省資源、省エネルギー及び廃棄物処理性を考慮し、合理的で、かつ、公正な包装。
・輸送包装では、流通過程での振動、衝撃、圧縮、水、温度、湿度などによって物品の価値、状態の低下をさせないような流通の実態に即応した包装。
・消費者包装では、過大包装、過剰包装、ごまかし包装などを是正し、同時に欠陥包装を排除するため、保護性、安全性、単位、表示、容積、包装費などについても適切である包装。 (JIS Z 0108より)

となっており、基本的には商品を保護することに重点を置いた内容となっております。
また、この”適正包装”について、省資源、省エネルギーなどの項目が上がっているものの、費用については”包装費の適正化”のみの列挙に留まっています。

しかし、私は、この”包装費の適正化”を”商品のトータルコストを下げる事”と解釈し、包装という切り口をもって製品コストと物流コストの双方をトータルで低減する事だと考えます。
つきましては、次項で物流の視点から見た包装について、述べていきたいと思います。

物流の視点から見た包装について

まず、トータルコストダウンの分類について、大きく分けると次の3種類の方法があります。

1)製品コストを下げる
2)製品に手を加えず物流コストを下げる。
3)製品に手を加えて物流コストを下げる。

1)については、メーカー企業にとって重大なテーマではありますが、既に多くの企業が改善を行い、これ以上の効率化による大幅なコスト圧縮が難しい企業もあると思います。

次に、2)についてですが、現状、このパターンが最も多いのではないでしょうか?

しかし、先にありました通り、単純な単価の引き下げや物流領域のみでの効率化では、これ以上の物流コストの圧縮が困難な状況になりつつあります。

最後に、3)についてですが、この場合、複数の領域が関係してくる為、様々な障害もあると思います。しかし、規模や業種、現状実態にもよりますが、改善の解決策として非常に有効であると考えます。

では、3)について、少し具体的に述べさせて頂きたいと思います。

製品に手を加えて物流コストを下げるとは

まず、物流コストに大きな影響を及ぼす項目として「物流機器への積載効率」「保管効率」があります。特に、物流コストの大半を締めるのが配送コストである事から、「物流機器への積載効率」による影響が大きいのが一般的です。この「物流機器への積載効率」を向上させるには、「受注ロットの見直し」や「物流チャネルの見直し」などが一般的ですが、「包装サイズ/輸送時のモジュールサイズ」も大きな影響を与えます。

極端な事例を挙げますと、1.2m以上の長さのパレットを導入している企業において、パレット単位での拠点間転送を行っている場合、一般的な車輌の荷台幅に対し、1列づつしかパレットが積めず、デッドスペースが発生するなどがあります。

尚、輸送効率を上げる為、バラ積とした場合、積込・荷卸作業に工数が掛かり、輸送時のコスト増加に繋がる場合もあります。

また、複数の商品をバラ積とした場合でも、車輌への積みつけを考慮していない包装サイズであった場合、デッドスペースが発生し、輸送時のコスト増加に繋がります。

従って、適正包装とは、商品保護の緩衝設計のみならず、包装寸法と輸送機器の寸法適合性を鑑みて、包装サイズ/輸送時のモジュールサイズを設定する事であるといえます。

又、今後益々重要となる環境問題への対応も最重要課題である為、次項で包装からみた環境問題への対応について簡単に述べさせて頂きます。

尚、本項で述べましたモジュールサイズを設定する際のご参考として、各国の包装関連規格を挙げさせて頂きます。

[参考]各国の包装関連規格(抜粋)

環境問題への対応

前述の通り、環境問題への対応はCSRやコンプライアンスの観点からも避けて通れない社会問題となっております。

また、この『包装』についても、包装資材の廃棄物問題として今や避けて通れない社会問題であり、容器包装リサイクル法対応の為にも、廃棄物処理等の対策を鑑みた包装開発は、企業にとって重要な課題となっています。

そこで、環境問題に対する包装サイドの対応項目について、簡単に述べさせて頂きます。

まず、環境の立場からみた包装の分類は

①REDUCE :包装廃棄物の削減≒減量化包装(省材料梱包)
②RECYCLE:包装再生≒リサイクル包装
③REUSE  :包装の繰り返し使用≒通い包装
の3分類(3R)となっております

これら3分類への対応項目としては、まず、材料使用量の削減があります。これは、廃棄物量削減の効果のみならず、原価低減効果も伴う為、各企業にとっても、取組みし易い項目であると考えます。

次に、易廃棄性材料の使用があります。これについては、プラスチック系材料よりパルプ系材料の方が環境への影響が少ないと考えておられる方もおられると思います。しかし、実際には、プラスチック系材料よりパルプ系在庫量の方が、環境への影響が大きいという研究資料も多数発表されている為、随時新たな技術や研究資料を確認される事をお勧めします。

3つ目は、処理(分離・分別)し易い仕様・構造とする事です。具体的には、材質表示、分離用ミシン目などです。尚、材質表示の規格については、国内はJIS、海外はISOやSPIなどが一般的である様です。また、容器包装リサイクル法対応の為のマーク表示が法制化されたことも付記させて頂きます。

最後は、リサイクルできる包装材の使用です。これについては、当然ながら包装材料の回収
率が高い材料を使用すべきですが、再商品化委託費用の変化も鑑みる必要があります。
尚、本項で述べさせて頂きました環境対応のご参考として、包装に関わる環境関連法規を挙げさせて頂きます。

[参考]包装に関わる環境関連法規

最後に

内容は如何だったでしょうか。”生産のプロ”の方々からすれば周知の事実であったかも知れません。

しかし、今回ご紹介させて頂いたのは”解決策の1つ”にすぎません。単純な単価ダウンによる効率化や物流領域のみでのコスト圧縮が困難な昨今、製造・販売領域などを含めた真の意味での”全体最適を指向”する必要があります。

国際社会において、まだまだ全体最適が遅れている我々日本企業が、いち早くSCM実現に立ちはだかる大小様々な壁を克服していくことを期待しています。

もちろん、我々ロジ・ソリューション株式会社は物流事業者と荷主企業との双方の立場に立った第三者として「解決策」を売っていく企業であり、荷主企業・物流事業者を問わず、真の意味での全体最適を指向する企業のお役に立てる存在である事を付記させて頂きます。

(文責:高田)

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