動産担保融資について:センコー株式会社の事例から

動産担保融資とは

動産・債権担保融資(ABL:Asst Based Lending)とは、金融機関が不動産以外の在庫や設備、売掛債権を担保として企業に融資をする制度です。

米国では1970年代に制度がスタートして以来、融資残高は伸びており2007年の実績では50兆円を超えるほどになっています。

日本では2005年10月に施行された「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」により、動産譲渡登記制度が創設され、企業が融資元の金融機関などを譲受人として、担保となる動産の譲渡を登記することが可能になりました。

これによりこれまで不動産を所有しない中小企業など融資を受けにくくなっていましたが、この制度活用により資金調達が容易になっており、実施例も2008年度585億円とここ数年で急拡大しています。


(出所)金融庁「平成20年度における地域密着型金融の取組み状況について」

物流と動産担保融資

物流との関係で言えば「在庫」を動産担保融資の対象とすることが考えられます。

しかし、単純に財務諸表上の棚卸資産が、そのまま担保対象(価格)になるわけではなく、在庫を評価する第3者機関(NPO法人日本動産鑑定等)による鑑定が必要になります。

更に、在庫は不動産と違って「動産」のため担保の保全方法も課題になります。

つまり、常に動く担保をいかに監視するかということです。そこで、物流会社のもつ情報システム(WMS:Warehouse Management System(倉庫管理システム))による在庫のモニタリングが求められてきます。

物流会社としても荷主が倒産すれば物流会社としても貸し倒れや賃料収入面等で大きな被害を受けるばかりでなく、管財人が処分を決めるまでは勝手に処分も出来ません。このリスク回避という側面からも在庫のモニタリングは物流会社にとって有効な手段になり得ます。

センコーと動産担保融資

センコー株式会社では2008年11月にABLの第一号案件を稼動させています。

センコーが在庫管理・配送している荷主様に対して、ノンバンクがその商品在庫と売掛債権を担保に融資を実施しました。荷主・センコー・ノンバンクで3者契約を締結しセンコーがモニタリングした在庫情報をノンバンクに提供しています。またセンコーではABLに対応する為、既存のWMSをベースに在庫量の変動に応じて「動産の再評価」「出荷停止」を金融機関にアラートする機能を付加したシステムを構築しました。

更にセンコーでは2006年10月に物流金融サービス会社「ロジファクタリング(株)」を設立する等、金融面からのサポート体制も出来ている等、今後の更なる動産担保融資の展開の準備は整っているといえます。

(文責:第2グループ 杉本)

【参考文献】
発行 ライノス・パブリケーションズ
月刊ロジスティクス・ビジネス 6月号 特集1「物流金融入門」
金融庁ウェブサイト
平成20年度における地域密着型金融の取組み状況について」
https://www.fsa.go.jp/news/21/ginkou/20090708-3.html

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