ロボット革命と物流の未来

2015年1月23日、政府は『ロボット新戦略』を発表しました。2014年5月にOECD閣僚理事会にて安倍首相が表明した成長戦略に盛り込んだ事から取り纏められたもので、現状における立ち位置として、“産業用ロボット世界一”、“少子高齢化等、ロボットが期待される「課題先進国」”である日本として、ロボットを徹底活用して世界をリードする事を目指したものです。東京オリンピックが開催される2020年までの今後5年間をロボット革命集中期間と位置付け、ロボットを日常の隅々にまで普及させ、日本を世界最先端のロボット・ショーケース化する絵姿を示しております。(注1)

対象分野は既に有効活用されている産業用ロボット分野に加えて、サービス分野への導入にも重点を置いており、2035年の将来市場はサービス分野で4.9兆円(全体9.7兆円)と予測されております。(注2)

われわれの物流分野における具体的な目標として、2020年までに『ピッキング・仕分け・検品に係るロボット普及率約30%』を目指すとも記載されております。参考ですが、現在において実用化されており、上記数値算出の事例基となった第6回ロボット大賞優秀賞受賞の「医薬品物流センター高度化ロボットシステム」では、ケースピッキング85%、ピースピッキング63%のロボットによる自動化を実現した先進実績もあります。(注3)

では、このロボット革命が物流にどのような影響を及ぼすのでしょうか。一口にロボットといっても、多種多様なものがあります。JISによる定義ではロボットは、“センサー”、“知能・制御系”、“駆動系”の3要素を備えた機械となっておりますが、定義通りで無くとも、より視野を広げて新技術としてのロボットを捉える事など柔軟な思考を持つことも必要と考えます。

これまで本寄稿でご紹介した新技術も選択肢の中に含まれると思いますが、この中のいくつかが、もしかしたら数年後には物流の常識となっているのではないでしょうか。
<参考:新技術に関するばんばん通信バックナンバー>

  • 音声認識(37号)、ウェアラブル端末(226号)
  • パワーアシストスーツ(287号)
  • 自動運転(257号)
  • 無人航空機(238号)
  • IoT(225号/272号)、AI(283号)

少し話が飛躍しますが、近年より一層深刻化している物流労働力不足の課題に対しては、何か1つでなく、様々な角度からの複数の策をミックスして取り組む必要があると考えます。労働力を確保する為に、「女性の活用」、「シニア世代の活用」やその為の制度・仕組み構築も方法論の1つであり、また、今回ご紹介したロボット革命のような新技術導入も課題解決には重要なファクターであり、社会全体として求められているものであります。

このような状況を踏まえると新技術の導入等により物流の自動化が前に進んでいくことは、まず間違いないと考えられます。しかし、どのくらい近い未来なのか?どの技術なのか?どの程度自動化されるのか?など、物流の未来について、現時点ではまだまだ具体的にはわからないですが、今後起こりうるこの変化は、物流の歴史に大きなインパクトを与えるものになるのではないでしょうか。

皆さまはどのような物流の未来を想像していらっしゃいますか。

(文責:北村 健)

【参考文献】
(注1)ロボット革命の実現に向けて(経済産業省)
https://unit.aist.go.jp/rirc/consortium/document/150612/150612-k2h.pdf
(注2)2035年に向けたロボット産業の将来市場予測の概要
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_0095A.html
(注3)第6回ロボット大賞「医薬品物流センター高度化ロボットシステム」
https://robotaward.jp/archive/2014/prize/robot10.pdf

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第298号 2015年10月21日)