ドライバー不足だけでは無い!?運行管理者不足のリスクについて

物流業界におけるドライバー不足が叫ばれて久しく、読者の皆様も深刻な問題であると認識されていることと思います。しかしながら、運行管理者の不足は更に深刻なリスクがあると筆者は感じており、少し話をさせて頂ければと思います。
まず運行管理者は、道路運送法及び貨物自動車運送事業法に基づき、一定数以上の事業用自動車を有している営業所ごとに、一定の人数以上の運行管理者を選任しなければなりません(表1参照)。したがって、ドライバー不足を解消するために自社で新規ドライバーを採用し事業用自動車を増車した場合、車両数に応じた運行管理者も合わせて増員する必要があります。更に、運行管理者は資格を取得した者でないと選任することが出来ないため、年2回の運行管理者試験が行われております。
この運行管理者試験の合格率が平成19年をピークに年々低下、近年は20%~30%の合格率であり、然るべき準備をして臨まないと取得できない難しい資格(※1)になっております(表2参照)。


(表1)運行管理者の必要人数


(表2)貨物運送管理者試験の合格者推移

このような運行管理者の増員が出来にくい環境の中で、「過積載・過労運転の防止」、「点呼の実施」、「乗務員に対する指導・監督」など現在配属されている運行管理者の身体的・心理的負担は重く、徐々になり手が少なくなってきているように感じます。
また、運行管理者は数限りある車両勢力で安全・コンプライアンスを遵守しながら効率的な運行を実現する重要な役割も担っており、その配車計画の良し悪しで事業所の収益を大きく左右する重要な人材でもあります。その様な人材が減少していくことは企業にとって死活問題であり、早急に対応していく必要があると切実に感じております。
運行管理者を継続的に育成していくには、所得面の待遇見直し、資格取得のための教育ツールの作成、ストレス軽減・メンタルケアが出来るような職場風土の実現など、様々な環境整備が必要だと思います。これを全て実現するのは難しいかもしれませんが、運行管理者が充実して業務できることを今から実行していくことが、将来その企業にとっての強みになりますし、「いかに優秀な運行管理者を自社で確保できるか」が今後の物流事業者のキーワードになると思います。

(※1)運行管理者の資格は試験に合格する以外に、「事業用自動車の運行の管理に関し5年以上の実務の経験を有し、その間に運行の管理に関する講習を5回以上受講していること等の要件」を満たしていれば取得することが出来る。

(文責:鍋田 貴秀)

【参考文献】
(1)[運行管理業務と安全]マニュアル(公益社団法人 全日本トラック協会 2015.1改訂)
https://www.jta.or.jp/member/pf_kotsuanzen/unkou_kanrigyomu_anzen_manual.pdf(2)運行管理者試験(貨物)さらに過去の合格率(運行管理者試験対策.net)
https://www.unkan-net.com/passrate2.html

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第313号 2016年2月10日)

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