「物流の教科書」-2:通信販売の配送料について

ECの配送料表示をどうするべきか

2020年3月末に上梓させていただきました『基本がわかる実践できる 物流(ロジスティクス)の基本教科書』から、今回は、通信販売の配送料について取り上げます。

通信販売で商品を購入することが多くなっていると思いますが、配送料についてどの程度関心をお持ちでしょうか。無料、もしくは一定額以上購入すると無料にするという場合が多いですが、最近では一定額の配送料を負担となっている場合も見られます。

消費者の立場から考えると、商品を購入する場合は少しでも安く購入したいとなりますので、配送料無料のほうが安く感じる場合もあると思います。しかしながら、物流業界の立場から考えると運賃がかからないはずはないので、商品価格と配送料を明示してもらったほうがよりわかりやすいと思います

例えば、10,000円で配送料無料(実際は500円)となっている商品があったとしますと、商品代金10,000円+配送料0円ではなく、商品代金9,500円+配送料500円で10,000円とすべきです。このようにすれば、商品価格が比較でき、配送料も比較でき、消費者が販売者を評価することができます。また配送先の地域によって配送料が変わる場合と一律の場合がありますので、その点でも購入時に比較できることになります。

リードタイムによる配送料の割引も一案

また、通信販売で配送リードタイムが長い場合に配送料を差し引くという仕組みを取っている企業がありました。価格差が少額のため価格弾力性が発揮されないのではないかと思いますが、とても良い仕組みだと思います。すべての人がすぐに商品がほしいわけではないので、ニーズに合わせて配送料も選べることになるからです。

同時にこのようなオーダーがあれば、物流センター側の波動が軽減され効率化が可能となります。例えば、当日出荷が必要なオーダーと翌日でもよいオーダー、3日後でもよいオーダーがあれば、物流センターは当日出荷オーダーと残りの工数で翌日分を出荷すればよく、一定の時間になれば作業を終了できます。翌日は、前日に翌日でもよかった残りのオーダーが当日出荷オーダーになるように変えることで対応できます。同様のことが続けば、毎日の出荷作業が平準化され、より効率的に運用できることになります。実際には日々のオーダーの変化がありますが、これをうまく対応する仕組みを作ればよいわけです。

このようなことをはじめとして、いろいろな施策を検討し実現するためには、商品価格と物流費を分離して考えることが必要です。

次回通信販売を利用される際に、物流の立場で配送料を一度ご覧になられてはいかがでしょうか。新しい発見があるかもしれません。

(文責 中谷 祐治)

【参考資料】
中谷祐治『基本がわかる実践できる 物流(ロジスティクス)の基本教科書』

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(ロジ・ソリューション(株)メールマガジン/ばんばん通信第455号2021年6月9日)